「お客様の笑顔が第一」と語る人が要注意なワケ 多くの経営者が判を押したように語るが…
しかし、人の欲求とは限りなく高まってしまうもの。たとえば、定食屋の生姜(しょうが)焼きがお気に入りのEさん。仕事で成果が出たときにご褒美として食べることが、彼のモチベーションを高める要因になっていたとしましょう。ところが誰かに連れていってもらった黒毛和牛のコースが本当においしかったとしたら、これまで好きであった安い生姜焼きでは物足りなくなるかもしれません。
あるいは出版社の編集者として、100万部のベストセラーを企画したFさんの場合、業界のスターとして扱われて以来、重版はおろか10万部を突破しても満足することができなくなり、常に100万部を目指していました。
しかし実際には、黒毛和牛のコースを日常的に食べ続けたり、100万部を突破する作品をつくったりすることだけをモチベーションにしていたら、仕事はやがてしんどくなるのではないでしょうか。
つまり、モチベーションを上げる要因を、大小織り交ぜて持っておくのです。
モチベーション曲線を意識する
私はよくモチベーションの変化を確認するために、「モチベーション曲線」を描くことがあります。過去から現在まで普通の状態を中心においてモチベーションが下がれば下にプロット、上がっていれば上にプロットし、線でつないでみるのです。
大事なことは、下から上に上がった瞬間がいつで、そのときに何が起きたのか振り返ることです。大きく上げたとき、小さく上げたとき、そこにはいくつもの要因が見つかるはずです。そしてモチベーションが上がった些細な要因に注目し、それを大事にしてみるのです。
たとえば、「提案書がスッキリと作成できるようになった」、「会議での説明がスムーズにでき、周囲が頷うなずく姿が見受けられた」、「いい仕事ぶりですねと後輩から称えられた」といったことです。
周囲からすれば大したことないと感じるようなことでも、自分からすればモチベーションが上がる出来事は日々たくさん起きているはずです。こうした上がる要因となる日常の出来事こそが重要です。
ぜひ、過去の出来事を振り返り探してみてください。些細ながらも再現性をもってモチベーションを上げてくれる要因が見つかるはずです。
もし見つけることができれば、それは偉大な発見となります。この要因に遭遇する機会を増やせば、仕事の成果が加速度的に上がるかもしれないからです。
「お客様の笑顔を見ることがモチベーション」と話してくれたのは、介護会社を経営しているGさんでした。経営者の想いをインタビューしたときにお聞きしたのですが、聞きながら違和感を少し持ったことを覚えています。
「具体的に笑顔を見てモチベーションが上がったときのことを教えてください」と質問し、話していただいたエピソードがあったのですが、何となくできすぎというか、きれいな話にまとまりすぎていて、共感度合いが低かったのです。話している目を見ても、本気で思っているようには思えませんでした。
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