結論として、政治局会議では新型コロナウイルスに対する国家的対策を徹底的に講じることを内容にした「共同決定書」が採択された。「共同」としているのは、朝鮮労働党中央委員会、朝鮮民主主義人民共和国国務委員会、同内閣の3者が共同で決めたという形式をとっているためだ。
さらに4月12日の最高人民会議では、コロナ事態が重要な議題の1つになった。国家予算では、今年の保健分野の国家予算を「前年比7.4%増」と決定し、2019年比で増額している。さらに国家の防疫体制を強化し、医療機関や医療関連用品工場の整備・改修を進めることを決めた。今後、増額した保健分野の予算を使って、これら事業の拡充を図る計画なのだろう。
最高人民会議では、代議員として呉椿福(オ・チュンボク)保健相が発言している。呉氏は、新型コロナウイルス感染症を徹底的に防ぐ防疫事業が「全国家的、全人民的事業へと転換された」と発言。一方で、2019年の保健事業に対し「科学的な作戦と頑強な実践力がなければ人民保健事業を軌道に乗せることはできないことがわかった」と反省の言葉も述べている。
世界的流行の長期化がネックに
最高人民会議後にも、北朝鮮当局は国民に対し、「コロナ事態に気を緩めるな」とのメッセージを繰り返し発信している。
その1つが、4月14日に朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」が掲載した論説記事だ。ここで「一部の幹部と住民の間で、国家的な非常防疫期間が長期間にわたり、いまだ北朝鮮に伝染病が入っていないからといって、伝染病予防事業に漫然と向き合っている現象がある」と指摘。さらに「世界的な大流行伝染病を徹底的に防ぐための事業で最も警戒すべき問題は、これまでの成果に満足して警戒を緩める現象だ」と述べ、そのような人たちは国家的な防疫において絶対に黙認され得ないと、厳しく批判している。
金委員長をはじめ北朝鮮の最高指導部は、現時点では新型コロナウイルスの封じ込めに一定の自信を持っているようだ。この時期に最高人民会議の開催を決定したことも、そのような自信の表れだろう。
しかし、北朝鮮は中国と長い国境を接している。ウイルス発生源となった中国での感染状況や、同じく国境を接し経済活動でも深い関係のあるロシアでの感染者数増加など、対外環境に改善の兆しが見えないことに強い危機感を抱いているようだ。そのため、政治局会議、最高人民会議の開催を契機にコロナ事態への強い対策を打ち出すべきと考えたのだろう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら