「コロナ事態」に強力対応を決めた北朝鮮の内実 「感染ゼロ」豪語でも、国外感染拡大に危機感

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今回、2つの会議で対策を強化し、「共同決定書」まで出した。これは、朝鮮中央通信が2020年1月末、「非常設の中央人民保健指導委員会が、新型コロナウイルス感染症の危険性がなくなるまで、(通常の)衛生防疫体系を国家非常防疫体系へ転換する」と報道しているが、この国家的な非常態勢を「引き続き長期にわたって強化していく」ことを改めて内外に強調したかったためだ。

資源価格の下落も打撃大

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北朝鮮自身は「感染者なし」と豪語する一方で、韓国メディアを中心に新型コロナウイルス感染症による死者が発生しているとの報道が相次いで出ている。ウイルスの拡大がささやかれ始めた2019年末ごろから1月の北朝鮮による中朝国境封鎖までは、中朝間での貿易活動などでの往来が多く、また地理的環境からウイルスが北朝鮮に絶対に流入していないと判断するには厳しいものがある。

また、経済制裁が続く中で、新型コロナウイルスによる世界的な経済沈滞が続き、自国の経済活動が十分に行われないことも、北朝鮮にとって打撃となりそうだ。密貿易など非公式に国連の経済制裁対象品目の取引があるとはいえども、主要輸出品目である石炭、鉄鉱石などの地下資源の価格は、その世界市況に大きく左右される。コロナ事態が長引いて経済活動が停滞すれば、それらの需要も縮小し、価格も下がる。これでは外貨収入源も細るほかない。

同時に、北朝鮮で感染症が拡大すれば、それは指導部の失点につながり、国民からの失望を買う。社会、経済的に厳しさが広がるばかりだ。だからこそ、2019年末の労働党中央委員会第7期第5回総会で打ち出した「正面突破戦」の流れの中で、まずはコロナ対策を強化していくことで、国の結束を強めていく方針なのだろう。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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