足立区の過酷な子育て事情 保育園入園もかなわず、復職もままならない

拡大
縮小
区役所に異議申し立て文書を提出した母親たち(3月27日)

東京・足立区で、子どもを保育園に預けることが困難になっている。とりわけ大規模なマンション開発が続く梅田や西新井、千住大橋などの地区では、両親がフルタイム勤務の家庭でも、保育園への入園がかなわないケースが続出。母親の復職を阻む原因になっている。

「長男も強制的に退園させられた」

区内の再開発エリアに住む山中さとみさん(仮名、29歳)は、1歳になった二男を長男(3歳)と同じ認可保育園に預けて育児休業からの職場復帰をめざしたが、運悪くも「不承諾」(落選)の通知を区役所から受け取った。これをきっかけに、育休中であっても「下の子どもが満1歳を迎えた年度の末日までは上の子どもも在園できる」との区のルールに抵触。「長男も強制的に退園させられた」(山中さん)。

児童福祉法第24条は、自治体(市区町村)による保育実施義務を定めている。つまり親の仕事などやむをえない事情がある場合には、自治体は「保育に欠ける」との理由で子どもを保育園に受け入れなければならない。ここで言う保育園とは、国が基準を定めた認可保育園であり、保育に対する需要の増大など「やむをえない事由があるとき」は、家庭的保育事業による保育(保育ママ)など適切な保護をしなければならないとされている。

だが、山中さんの二男について、足立区は「申し込んだ保育園に空きがない」ことを理由に入園を認めなかったうえに、「保育所入所実施事務処理要領」に基づいて、長男についても退園の届けを出すように求めた。その結果、二人の子どもの預け先がなくなった山中さんは、復職のメドが立たなくなってしまった。

次ページ「保育実施指数」を満たしても入園できない
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT