足立区の過酷な子育て事情 保育園入園もかなわず、復職もままならない

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こうしたさなかの3月27日、山中さんら母親たちは区役所を訪問。認可保育園入園の不承諾への異議申し立て書類を提出するとともに、認可保育園の増設などの待機児童対策を求める要望書を、近藤やよい区長宛てに提出した。母親たちによる異議申し立て行動は昨年3年に続くもので、直後に開催された保育課長などとの懇談で窮状を訴えた。

リーマンショック以降、入園申込者数が7割増加

2008年のリーマンショック以降、足立区でも共働き家庭の増加とともに、保育ニーズが急拡大している。区によれば、認可保育園入園の申込者数は08年度の2245人から14年度には3784人へと7割近くも増加。それとともに、不承諾も約8割増の1275人に達している。認可保育園に入れなかった場合でも、認証保育園や認可外保育園に預けるという方法もあるものの、保育料が割高なうえに、空きも多くはない。

坂口きよみさん(仮名、41歳)は2歳の長女を認証保育園に預けているが、「来年4月までに認可保育園に転園できなければ、仕事をやめざるをえなくなる」と打ち明ける。現在の認証保育園は2歳までしか受け入れないためだ。運良く認可保育園が見つかればいいが、自宅の周辺ではファミリータイプの高層マンションが次々と建設中だ。坂口さんが住む地区では定員60人の認可保育園がこの4月に開園したが、「一つ二つ増えても状況が変わるとは思えない」と坂口さんはため息をつく。

今回の異議申し立て活動を呼びかけた「足立区 保育所つくってネットワーク」代表の斉藤真里子さん(39)は、「懇談を通じて保護者の窮状に目を向けてもらえたことはよかった」と語る。その一方で、「保育園に入れない待機児童をなくすために、区にはもっとイニシアティブを発揮してほしい」と注文を付ける。

足立区では13~14年度の2年がかりで1000人の受け入れ定員増を盛り込んだ「待機児童解消アクションプラン」を昨年9月にとりまとめた。だが、保育需要の急増を読み切れなかったツケの支払いは当分続く。安心して子育てできる環境がいつになったら実現するのか。その見通しは依然としてはっきりしない。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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