コロナ禍に触発されて世界のスタートアップが次々に、大企業や政府が提供できなかったサービスやソリューションを提供している。これからのイノベーションのあり方も見直され、大きく変わるだろう。
紺野登氏は、30年前ほどからデザインと経営の融合を提唱し、企業の組織変革、リーダー育成、オフィスの場のデザインなどの実務にも、数多くかかわり、グローバルに活動してきた。
このたび、その集大成として、イノベーションにまつわる学問を超えた叡智と方法論を『イノベーション全書』として刊行した。本稿では、同書でも語られているイノベーションの流れを振り返り、現時点で世界で起こっていること、そして、これから向かうであろう方向性について論じる。
ブラックスワンは再び
「(21世紀に)私たちは多くの例外的事象を目にするだろう。(中略)これらの例外は基本的に経済的大地震や大噴火に匹敵する。(中略)それらは単に表層的な現れにしかすぎない。もっと深く、根本的な変化が私たちの経済的世界の構造には潜んでいる」
上記の文は、富の不平等問題を警告した経済学者、レスター・サローが1996年に書いたものである。
サローの予言のような新型コロナウィルスの伝染は、もっと時間がかかっていたはずの変化を噴出させ、加速することになった。イノベーションが重要だと頭ではわかっていても、腰の重かった企業にも待ったなしの状況が訪れている。
2008年のリーマンショックでは、供給側が需要側に過剰に貸し付けて信用破綻が起きた。経済システムはその後、大きな犠牲を払いつつも復元した。しかし、今回私たちが経験しているのは、需要側も供給側も麻痺し、全システムが止まってしまった状態だ。
サローにならえば、ブラックスワンは再びやって来る。今こそ、そのあり方を根本から見つめるべきときだといえる。
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