今こそ「都市イノベーション」に舵を切るべき訳 「元には戻らない世界」で私たちがすべきこと

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21世紀は「環境革命の世紀」ともいわれる。イノベーションを駆動する深層の力は、地球規模の環境変化だ。専門家たちはパンデミックが地球温暖化によって引き起こされる可能性を以前から指摘していた。

そして私たちは、これまでの世界が停止することで、きれいな空気や美しい風景、環境が戻ってくるのを垣間見てしまった。それは、20世紀の大量生産・大量消費で国家経済を繁栄させるというモデルの本格的な終焉を告げている。その変化を牽引するのは国家や企業ではなく、若い世代や都市民だ。

コロナ禍に触発されて世界のスタートアップが次々に、大企業や政府が提供できなかったサービスやソリューションを提供している。その流れに周囲が「参戦」するという動きが起きている。

台湾の「マスクマップ」アプリが世界で称賛されている。小売店のマスク在庫状況をマップ化し、市民がそれを見て安堵し、店に殺到しなくなり、配分が平準化する。日本では全世帯配給が話題になったが、そもそもマスク騒ぎは、在庫状況が不透明(流通構造のデジタル化の遅れ)、恐怖心から買いためる(ネットリテラシーの低さ)のが原因だ。

実は、100以上のアプリがある「マスクマップ」は、すべてプログラマーがオープンソースのツールで草の根的に立ち上げている。

「データはオイル(石油)」か、それに対して個人の権利は? といった「二項対立」の構図が議論されているが、台湾のアプローチは、そのいずれでもない。彼らはそれをデータ・コラボラティヴ(データ協業)という。

若い世代の可能性を引き出す

こうした「民主的」アプローチは、もともと台湾にはなかった。それは2014年、学生たちなどの若い世代が台湾の立法院を占拠して与党に抗議したという運動がきっかけだった。そのリーダー格が、現在デジタル担当大臣をつとめるカリスマ・プログラマーのオードリー・タン氏だ。

企業が単に集まってオープンイノベーションとか、ソーシャルイノベーションなどと叫んでも、自社利益が根底にある限り、絵に描いた餅にすぎない。また、政府がイノベーション政策を掲げても、結局、生活世界を変えるには社会と協業・協調・協創するしかない。

そのためには、1990年代~2000年代に生まれたZ世代など、若い世代の力が必要だ。ところが、日本では少子高齢化で若年世代の絶対数が小さい。だから、意識的に彼らを支援し、参加させる政策・体制が不可欠だ。

もう1つ重要なのが、都市のイノベーションだ。4月8日、オランダのアムステルダム市が次代の循環経済構想を発表した。2020年からの5年間で200近くのプロジェクトを開始する予定だ。2025年までに家庭廃棄物の65%を分別、2030年までにその原材料の使用を50%削減、2050年までに、完全な循環する経済を目指す。

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