今こそ「都市イノベーション」に舵を切るべき訳 「元には戻らない世界」で私たちがすべきこと

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社会や市場で評価される価値、経営や製品開発の思考や方法、マーケティング、これまでのビジネスのやり方、そして働く人々の意識は根本的に変わりつつある。その先をにらんだ変化を起こさなければ消滅することになる。

多くの企業の明暗を分けたリーマンショックは、実は世界的なビジネスモデル・イノベーションの契機になった。

多数の「PDF」ファイルユーザーを抱えていたアドビ社も大きく停滞した。それまでCDパッケージでソフトを購入していた多くのユーザーが戻ってこないという状況に直面したのだ。そこで彼らはサブスクリプションモデルに転換していった。直後、8倍の売り上げに急上昇した。

これに倣ったのがマイクロソフトだろう。もう両社のソフトウェアを「箱」で買う人なんていないだろう。今、自動車業界もサブスクリプションモデルを試行している。こうしたビジネスモデルの破壊と創造は、どんな業界でも起きうるのだ。

イノベーション経営への転換の好機

イノベーションはリセッションを好む。歴史が語っている。

紺野登(こんの のぼる)/多摩大学大学院教授。1954年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。博報堂勤務などを経て現職。博士(経営情報学)。慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授、エコシスラボ株式会社代表、Future Center Alliance Japan代表理事、Japan Innovation Networkの代表理事、日建設計顧問などを兼務。約30年前からデザインと経営の融合を研究、知識生態学の視点からリーダー教育、組織変革、研究所の場のデザインなどの実務にかかわる(写真:紺野登)

世界大恐慌時にGMは製品デザインでフォードを抜き去った。1990年代からの景気後退やドットバブル崩壊は常にスタートアップや新規参入の機会となった(アマゾンは1994年、サムスンの携帯電話参入は1997年、グーグル創業は1998年)。

2019年はイノベーション経営(IMS)に関する国際規格ISO 56002が発行されている。これに一番熱心なのが中国だという。これからのグローバルな経営が、イノベーションを軸にして大きく転回していくことは明らかだ。

さらに、危機は進化のための協調を生み出す。今、私たちが経験している現在から未来へのシナリオはいくつもあるだろう。その1つが、これまで経済を動かしていた競争戦略的な経済倫理が、協力や協調の倫理にシフトする、というものだ。

グローバル資本主義が機能不全を起こし、かつ米英などの短絡的なローカリズムが混乱を招く中で、そのいずれでもない、新たなグローバル協調、つまり経済でなく、人間や社会・環境のための「多元共生」の芽が生まれる。現状を見ると、このシナリオはきわめてリアルだ。

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