PDCAが元凶!コロナ禍では現場最重視しかない 「無能な上司の計画」で信じられない大混乱が

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個人レベルではこのようなことをやっている人は多いでしょう。しかし、これを組織的に実施していくことはほとんどの会社では実践できていません。これを組織で回していこうというのがOODAループの基本的な考え方です。

このようななかでは、失敗は当たり前です。失敗を避けるのではなく、失敗を積み重ねていくことで不確実性を削減し、一筋の光明をつかんでいくのです。

私の友人のアメリカ人プログラマーがかつてこのようなことを言っていました。

「プログラマーの仕事とはバグとの闘いであり、デバッキングがその主な作業内容となる。そのなかで二流のプログラマーは9回失敗して諦めてしまう。一方、一流のプログラマーは99回失敗して、100回目に成功する」

つまり、99回の失敗に耐え続けられる人こそが一流になれるのです。OODAループとは、このような死屍累々の失敗を積み重ねることで現場の智慧を学習し、成功へと近づいていく泥臭いアプローチなのです。それは、トップダウンの高踏的なロジカルシンキングや戦略的思考と呼ばれるものとは似て非なるものなのです。

知識の集積は智慧にはならない

「智慧は知識ではない。この2つを混同してはならない。智慧は知識を正しく用いることである」

これは、スポルジョン牧師の言葉です。言い換えると、知識をいくら集積しても、それは智慧にはつながらないということです。

現場と遊離したところで高踏的に知識を振りかざし、「資料づくり」を一生懸命やったとしても、それは智慧ではありません。智慧とは、正しく知識を使い、それによって価値を生み出すことです。知識を学ぶなというのではありません。むしろ、多くの知識を学ぶことはいいことです。しかし、それを現場で活用しない限り、それは単なる教養にすぎません。

正しい知識の使い方である智慧を得るためには、現場でのOODAループによる死屍累々の失敗の積み重ねが重要になるのです。そのためには、私たちは失敗に対する見方を根本的に変える必要があります。もちろん、闇雲に失敗することは避けるべきです。しかし、ミッション達成という軸がブレない限り、「致命的でない失敗」は奨励すべきです。

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哲学者、カール・ポパーが言うように、「私たちは誤りを通じてのみ学習し、成長することができる」のです。そのためには、不可逆的でない、可逆的な失敗を積み重ね、それらを排除していくことが肝要です。

PDCAでは、誤り、失敗は悪になります。一方、OODAループでは、それらは悪ではなく創造の源泉であり、進化の原動力となるのです。

このような取り組みが現場でできる政府や企業こそ、コロナ禍という誰も経験したことがない危機を乗り越えることができるのではないでしょうか。

原田 勉 神戸大学大学院経営学研究科教授

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はらだ つとむ / Tsutomu Harada

1967年京都府生まれ。スタンフォード大学Ph.D.(経済学博士号)、神戸大学博士(経営学)。神戸大学経営学部助教授、科学技術庁科学技術政策研究所客員研究官、INSEAD客員研究員、ハーバード大学フルブライト研究員を経て、2005年より現職。専攻は、経営戦略、イノベーション経済学、イノベーション・マネジメントなど。大学での研究・教育に加え、企業の研修プログラムの企画なども精力的に行っている。主な著書に、『OODA Management(ウーダ・マネジメント)』(東洋経済新報社)、『イノベーション戦略の論理』(中央公論新社)、『OODALOOP(ウーダ・ループ)』(翻訳、東洋経済新報社)などがある。

 

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