このような非常時に限らず、平時においても、現場の問題に即座に反応する即興演奏的なスピード経営の比重が高まっています。顧客の需要に即応した受注生産、組織的なチーム営業の実践、ソーシャルメディアを活用したSNSマーケティング、他社に先駆けた製品開発など、現場情報の戦略的重要度はますます高まりつつあります。
この現場情報を迅速に収集し、問題解決に当たっていくためには、現場に権限移譲しつつ、結果についてはトップが責任をとることが必要です。つまり、現場にミッションとそれを達成するために必要な資源を与えると同時に、本社なりトップは現場に介入せず、後方から現場を支援するという姿勢が大事になります。
そこで必要なのは、儀式としての「計画」「資料づくり」ではなく、「走りながら考える」ということです。
このような経営の仕組みをミッション経営といいます。それは現場重視の経営であり、本社や社長が偉いのではなく、現場の営業マン、職長、技術者が鍵となるのです。この場合、マネジャーとは、管理者(コントローラー)ではありません。かれらを支援するスポンサーでありスタッフなのです。
通常、スタッフとは役員を含めたラインマネジャーに対する支援者を意味します。しかし、このミッション経営の下では、現場の人たちに対する支援こそが、役員を含めたラインマネジャーの仕事になるのです。
かつて裏千家坐忘斎家元が、「家元の仕事は、マンションの管理人のようなもの」と言われていたのを聞いたことがありました。つまり、マンションの管理人とは、マンションの住民を管理しているのではなく、住民の住環境を快適なものにするように仕事をしているのです。企業の経営者もこのマンションの管理人のような仕事に集中すべきでしょう。別の例でいえば、タレントや野球部のマネジャーのような役割です。
ここで大事なポイントは、一体だれが組織に価値をもたらしているのかという点です。それは本社の会議室ではなく、現場なのです。
OODAループの高速回転により失敗を積み重ねる
このようなミッション経営は、価値を生み出す現場においてOODAループを高速で回していくことが求められます。それが、「即興演奏」や「走りながら考える」ということを可能にするのです。
OODAループとは、観察(Observe)、情勢判断(Orient)、意思決定(Decide)、行動(Act)から構成されます。しかし、このアイデアの創始者であるジョン・ボイド元アメリカ空軍大佐は、観察、情勢判断、行動のループを重視しました。すなわち、OOAです。意思決定をはさむとそれでは時間のロスとなるからです。
PDCAのような分析的、論理的知識を問題にするのではなく、直観的判断や現場での智慧を重視するのです。ミッションを与えられた現場担当者は、計画ではなく観察から始めます。事実を観察し、そこから瞬時に情勢判断し行動へと即座に移していくことが求められます。これが「走りながら考える」ということです。
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