一貫したタモリブランドの演出~怒らなかったタモリ
「笑っていいとも!」が提供してきた、“いつもそこにタモリがいる”安心感であるが、32年間、悲しい日やつらい日がなかったはずがない。しかし昼に8チャンネルに合わせれば、いつものひょうひょうとしたタモリの姿がある。笑っていいとも最終回の特番の終わりで、各芸能人がタモリに送るスピーチをしているとき、共通して出てきた言葉が「本当はものすごくシャイで、優しい人」という点と、「絶対に怒らなかった」という点である。
感情の起伏を強く出さないのは、「いつもそこに同じタモリがいる」という安心感を演出するのに不可欠な要素であっただろうし、集まったタレントが涙を流しながらあいさつをする感情的な場面でも、タモリさんはいつものひょうひょうとした、ユーモラスだがクールなキャラクターを崩さなかった。
この「怒らずに背中で見せて他人をマネジメントする」というのは、人材マネジメント上、非常に難しいことである。 芸能界という特殊な業界で、いざとなればタモリさんひとりで場が成り立つからこそできた芸当かもしれないが、怒らなかったタモリが、なぜ怒らなかったのかを考えることで、芸人一人ひとりの自律的なガバナンスが促されたことだろう。これは実際の会社生活でも、とにかく小さなことでガミガミ怒る上司だと周囲のやる気がなくなるのに対し、圧倒的な大御所が部下の失敗を目の当たりにして静かに自省を促したときに、より人が育つのと共通しているといえよう。
そんなタモリさんに触発された私も、いつもデッドラインをミスりがちな部下に対して、怒らずに自制を促してタモリ流人材マネジメントを試してみたところ、単に平気でデッドラインをミスるようになっただけなので、やはり底流に部下からの深い尊敬を受けているかどうかが肝心なのは言うまでもない。
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