「週刊GEORGIA」こそプロデュースの見本 KADOKAWA取締役相談役 佐藤辰男(下)

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佐藤:もうひとつよくやったのは、営業部、広告部、宣伝部、編集部と、それぞれの部署がローテーションで、自分たちの仕事について説明する社内講演会です。3カ月に一遍ぐらいやりましたが、これも評判が今ひとつでね(笑)。

三宅:いろいろやり続けるのは大変ですけど、意識は変わるのですね。

佐藤:今は2000人規模の会社になったので、こういう素朴な社内研修をどうやっていくかは、テーマになってくるだろうと思います。2003年に角川ホールディングスになったときは、毎年「次世代角川プロジェクト」を行っていました。3年後、5年後にどんな事業をやりたいか、企画する会議です。30代から40代の中堅社員が対象でした。

才能の埋まっている場所は変化する

三宅:今までずっと紙メディアをやってきた人に対して、デジタルのリテラシーや考え方を教える工夫はありますか?

佐藤:これは難しいですよね。講演会など、いろいろなことをやってきましたが、どれが正解だったかはわかりません。ワンカンパニーになるに当たっては、合併を検討していた昨年1月と、合併を発表した5月、合併直後の10月、そして少し落ち着いた今年1月の合計4回、全体会議を開きました。これは会長の案ですけれども、社員全員を集めて、僕と各本部長、最後に会長が、なぜ合併するのか、前編で触れた3つのコンセプト、5年後のKADOKAWAの姿などについて話しました。

三宅:社員全員参加とはすごいですね。

佐藤:4回の会議で空気が変わりました。1回目は出版界の状況を説明して危機感を共有し、社員の考え方が変わってきたことを感じました。2回目ではワンカンパニーになったら何をするかという発想が生まれ、3回目は一緒に頑張ろうという雰囲気作りをしました。そして4回目にあらためて事業の具体的な詳しい話をして、会社の現状と未来像を社員全員で共有できたと思います。

三宅:今後はどんなことに取り組んでいきたいですか?

佐藤:IP企業体とはいえ、われわれも出版社です。どんなに変化してもいちばん大事なのは、才能がどこから生まれてくるか、絶えず目配りしていることだと思います。プロデューサーは自分自身に生み出す能力があるわけではありません。誰かが生み出すものを展開することに喜びを感じるとすれば、どこに才能が埋まっているかに、つねに敏感でなければいけないし、その勘が働かなくなったり、大きくズレたりしたら困ります。この10年を振り返ってもわかりますが、才能が埋まっているところは変化するんですよ。

三宅:なるほど、時代とともに変わるわけですね。

佐藤:小説の生まれる場所も、これから変わっていくでしょう。芥川賞、直木賞ばかりではないし、われわれの「魔法のiらんど大賞」のほかにも、ディー・エヌ・エーの「Eエブリスタ」、あるいはUGCのようなものもありますから。

三宅:いろいろな業界で新しい事業をやろうとしている人、チャレンジしようとしている人に対して、メッセージをいただけますか?

佐藤:大事なのは挑戦する心です。仕事をする以上は、ネットワークの中で自分自身も成長していかなければなりません。つねに挑戦する心を持ってほしいと思います。

(構成:仲宇佐ゆり、撮影:尾形文繁)

三宅 孝之 ドリームインキュベータ執行役員

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みやけ たかゆき

京都大学工学部卒業、京都大学大学院工学研究科応用システム科学専攻修了(工学修士)。経済産業省、A.T. カーニー株式会社を経てDIに参加。経済産業省では、ベンチャービジネスの制度設計、国際エネルギー政策立案に深く関わった他、情報通信、貿易、環境リサイクル、エネルギー、消費者取引、技術政策など幅広い政策立案の省内統括、法令策定に従事。DIでは、産業プロデュース事業を統括し、環境エネルギー、まちづくり、医療などを始めとする様々な新しいフィールドの戦略策定及びプロデュースを実施。また、個別プロジェクトにおいても、メーカー、IT/通信、金融、エンタメ、流通、サービスなど幅広いクライアントに対して、新規事業立案・実行支援、マーケティング戦略、マネジメント体制構築など成長を主とするテーマに関わっている。

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