コンテンツホルダーが米国の横暴と戦う方法 角川歴彦×川上量生 対談(5)
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——角川会長の新刊『グーグル、アップルに負けない著作権法』では、アメリカの著作権法についても触れられています。日本の事業者には、どのような影響があるのでしょうか。
角川:アメリカは世界中にネットワークを張り巡らせている。いちばんわかりやすいのは軍事力です。その次にソフトパワー、ハリウッドの映画などですね。それから原子力。なぜ東海村に日本初の原子力発電所を造れと言われたかといえば、それによってアメリカの原子力ネットワークの中に日本を組み込むのが狙いだったと思います。
それら種々のネットワークの中に、僕はITも入っていると思うのです。そういう中で、アメリカのクラウド事業者は守られている。だから、中国がグーグルに「出て行け」と言ったとき、国務長官だったヒラリー・クリントンが、ITはアメリカの象徴だとかばった。あれは本音だと思います。
川上:ああ、ありましたよね、そんなことが。
角川:アメリカは、世界に出ていく企業に対しては、全面的にバックアップする。アメリカを象徴して送り出す。でも、自分の国で横暴になった企業は、独占禁止法でたたくのです。マイクロソフトが大きくなったときはマイクロソフトをたたき、アップルが大きくなったときにアップルをたたく。アメリカがすごいのは、競争政策を維持するためには、バックアップしていたはずの企業も遠慮なくたたくところです。
一方で、日本の省庁は、自分の管轄の企業をコントロールするために頭をなでるんだよね。総務省は、テレビ局が自分の傘下に収まっていれば、「許認可しているのはわれわれだよ」と言いながらテレビ局の頭をなでる。アメリカは競争させるんです。産業政策がまったく違う。だから、グーグルやアマゾンやアップルが日本にやってきて日本のマーケットを蹂躙(じゅうりん)するのは、アメリカとしては大歓迎なんです。