コンテンツホルダーが米国の横暴と戦う方法 角川歴彦×川上量生 対談(5)
川上:ビジネスの競争相手ですからね。
角川:そう言ってくれたら、僕らもわかるんです。「ニコニコ動画はわれわれと競合しているからダメだ」とはっきり言ってくれたほうが、川上くんもスッキリするでしょう?
川上:そうですね、普通に明言してほしいです。それに関しては、プラットフォームホルダーが審査するということと、NDA(秘密保持契約)の問題が絡み合っていて、真実が伝わりにくいというところがあると思います。
ビジネスだから、不公平なら不公平でいいのです。でも、それを「公平」と標榜しているところが、実際は不公平であるということが、世の中に知られない状況になっているのは問題だと僕は思います。
——なんでグーグルが言うと、本当っぽく感じるのでしょうか?
川上:IT業界の歴史的な体質が原因だと思います。日本のIT業界は、アメリカではやっていることを日本に持ってきて、メディアはそれでビューを稼ぐし、似たようなビジネスを始めてマーケットのおカネを集めたり、ユーザーを集めたりしているので、基本的に舶来志向があります。要するに、「海外ではやったものこそ世の中の流れである」という固定観念が強くて、日本はつねに後れているという。「ネット舶来主義」ですよね。
2次創作は日本のコンテンツの勝負どころ
——ニコニコ動画や同人誌などでさかんな2次創作についてはいかがでしょうか。今の日本の著作権法に対して、もっとこうしてほしいという要望はありますか。
川上:コンテンツに関しては、もっと2次創作をやりやすくすべきなんですよ。これにはちゃんと理屈があって、今はコンテンツ自体がマルチメディアで売っているじゃないですか。たとえば、『GANTZ(ガンツ)』(週刊ヤングジャンプで連載されていた奥浩哉の漫画。アニメ、ゲーム、ノベライズ、実写映画化された)なんて、3Dモデリングソフトをばんばん使って描いていますよね。そうなると、そもそもひとりの作業でコンテンツがつくれなくなっているわけです。アニメはもともとそうですし、漫画なんかもやっぱりひとりでは描けない。かろうじて小説の世界は、まだひとりで書いている人が多いのかもしれないけど、メルマガだってもはやチームで書く時代です。
チームでつくるか個人でつくるかでいうと、日本は個人でつくるほうが得意なのです。だから、日本の漫画とか小説だとか、そういうオリジナルな作品は、個人でやっている場合が多い。
一方、ハリウッド映画は、シナリオなんかも完全に分業体制でつくっています。そんなふうにシステマチックにつくらないで、個人の能力で勝負しているのが日本なのです。
だから、日本の場合は「作家性」というのがキーワードになっていて、それによって日本のクリエーティブが働いているのですけれども、「個人の作家性を最大限に生かせるようなルールにすること」が、日本のコンテンツの競争力を高めることにつながります。ということは、2次創作をOKにしなきゃダメなんですよ。
もっと簡便に、いかに最後まで個人で勝負できるような環境をつくるかが、日本のコンテンツの勝負どころじゃないですかね。コミケだって立派なマーケットですから。