「週刊GEORGIA」こそプロデュースの見本 KADOKAWA取締役相談役 佐藤辰男(下)

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エディターではなく、プロデューサー

佐藤:僕は「週刊GEORGIA」の制作にはかかわっていませんが、メンバーと決起集会をしたときに感動したのです。KADOKAWAグループのいろいろな編集部がかかわっていて、全体をプロダクトマネジャーという、今までの編集部にはなかった立場の人間がコントロールしている。十数年前、デジタルでメディアを作って、ぎくしゃくしながらやってきましたが、ようやくこの現場でひとつの形ができたなと思ったのです。

佐藤辰男(さとう・たつお)
KADOKAWA取締役相談役
1952年静岡県生まれ。76年早稲田大学第一文学部卒業。86年角川メディア・オフィス取締役、95年メディアワークス代表取締役社長、99年角川書店 (現KADOKAWA)取締役、2008年角川グループホールディングス(現KADOKAWA)代表取締役社長、2014年4月からKADOKAWA取締役相談役(現職)

今までプロダクトマネジメントなんていう考え方は、デジタルの世界にはありませんでした。これはやはり手作りで作ったものなのです。だから今、どういう企業とどういうメディアで組めるか、いろいろ想像しているんですよ。ひとつの新しい広告収入の形ができたと思っています。

三宅:プロダクトマネジャーという人は、組織上いるのですか?

佐藤:外から引っ張ってきました。編集も技術もわかっていて、どこをどう押せば納期に間に合うのかといったことも経験している人です。今までの雑誌では、電子化するときは外部に発注していました。そういう関係しかないところから進化して、ようやくここまで来たというのが僕の認識です。

三宅:われわれから見ると、出版社にはプロデュース機能がありますし、テレビや映画にもプロデューサーがいますが、ほかの業種では機能として存在しないのです。だから世の中で新規事業が、なかなか立ち上がらないのではないかと思っています。出版社や映画業界の人のほうが、こういう取り組みを得意としているのではないでしょうか。

佐藤:そうだと思います。僕もかつてはメディアワークスという会社で、エディターじゃなくてプロデューサーじゃないとダメだという仕事をずっとやってきましたから。

三宅:佐藤さんが出版業界の血をデジタルに入れたわけですね。

佐藤:会社が小さかったこともあるかもしれないけど、制作委員会を組成して、その中で仕事をして、どういう権利を獲得するかとか、アニメ化されたときのシナリオで作家の思いをどう出していくかとか、あるいはマーチャンダイジングのときの造形の感覚とか、そのへんのプロデュースをできる人材じゃないといけなかったのです。

三宅:プロデューサー的な人は、ほかにも社内に何人かいらっしゃるのですか?

佐藤:本当に優れたプロデューサーは少ないと思いますが、いないわけではないですね。

三宅:プロデュースというのは、普通の製造業などに貸していただきたいぐらいの機能なんですよ。プロデューサーにはどんなことが必要ですか? 思いもあるだろうし、対人能力もあるだろうし、勉強もしないといけないし……。

佐藤:自分で自分の才能をここまでだと思っている人はできないですね。好奇心、成長したいという想い、とにかくゲーム、マンガ、小説が好きじゃないとダメ。ミーハーに人を集めてコミュニティを盛り上げたいとかね。

三宅:社内でトータルプロデューサー的な人を増やすために、組織構造、人事ローテーション、採用などで気をつけていることはありますか?

佐藤:結局、社内で教育していくしかないですね。今までやったこととしては、小説、コミック、映像の部署の全員を集めて、3年ないし5年で担当している作家をどう育てるかを検討する会議体を作り、毎月発表させました。そうすると、3年の中のどこで映像化しようかとか、どこで違う試みをしようかというふうに、自分で作家を育てる心が生まれてくるのです。しつこくやっていたら、みんな飽きてきたので違う形にしましたが、絶えずこういうことをやっていないと、初心を忘れるのですよ。

三宅:なるほど。

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