音楽教室のレッスン楽曲に著作権料払うべきか 東京地裁判決はJASRAC勝利、続く双方の対立

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続いては、今回の訴訟の原告となった「音楽教育を守る会」会長で、ヤマハ音楽振興会常務理事の大池真人氏の話だ。
大池氏はヤマハで楽器・音響営業本部長や取締役常務執行役員を経て、2017年にヤマハ音楽振興会常務理事に就任した。
インタビューで大池氏は「判決で示された法解釈は市民感覚から理解しづらい」と述べた。

判決には納得できない

――裁判に敗訴しました。

大池真人(おおいけ・まさと)/1960年生まれ。1982年日本楽器製造(現ヤマハ)入社。ヤマハミュージックヨーロッパ社長、ヤマハ楽器・音響営業本部長などを経て、2017年から現職。「音楽教育を守る会」会長も務める(撮影:梅谷秀司)

今回の判決は市民感覚からみてわからないところも多く、納得できない。今回の判決は、実際の演奏者ではなく、事業者が演奏を行っていると解釈する、いわゆる「カラオケ法理」を根拠にしてきた。カラオケ法理が形成されていったのは、カラオケで楽しそうに歌っているのに、その歌曲の著作者には何も対価が払われていないという事態が起きたからだ。音楽教室とは異なる背景でできた法理を振りかざされるのは納得できない。

音楽教育は民間事業者によるものであっても、公衆に聞かせる目的ではないとのコンセンサスがあったはずだ。ところが、カラオケでの音楽利用と同様、音楽教室では生徒ではなく、われわれ事業者が演奏していると解釈された。

つまり聴衆は生徒ということになる。すると、レッスン中に演奏している生徒が公衆である自分自身に聞かせているということになる。法解釈ではそうなるかもしれないが、この点は市民感覚からして理解しづらい。

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