音楽教室のレッスン楽曲に著作権料払うべきか 東京地裁判決はJASRAC勝利、続く双方の対立
――著作権料の徴収が仮に法的に正しくても、著作権料を徴収するやり方に反発の声もあがっています。
お客さんはこれまで、レストランやカラオケで著作権使用料を支払っているという感覚はなかった。カラオケや飲食店でJASRACが(著作権料を)徴収するようになったので「飲み代が高くなる」という報道はなかった。
だが、今回は教室の先生や生徒に関する報道や署名集めなど世論を味方につけるような、音楽教室側のアピールがかなり影響を及ぼしているのではないか。
JASRACとしても、ヤマハやカワイなどは使用料を払ってもらう大事なお客様だ。両者とも「音楽文化の発展に寄与する」という、JASRACと同じ事業目的を掲げており、にらみ合いはしたくないという思いがあった。
著作権への理解は進んでいない
――音楽教室側は裁判で争うだけでなく、現行の著作権法が「市民感覚から離れている」として、法改正も訴えています。
現状は、ダンス教室や歌謡教室、カルチャーセンターなどでは理解を得て、著作権の使用料を適正に支払ってもらっている。それを音楽教室側が「法律がおかしいから変えよう」というのは、彼らもこれまでの延長線上にある形態なので(今までの事業者とは)どこが違うのかと感じる。
音楽教室側は、利用目的が(音楽教育という理想が)高いようなことを言うが、カラオケとそもそも何が違うのか。(法改正はAI活用のためなど)あくまでもまったく新しい利用形態に関してのみ、考える余地はあると思う。
一方には著作権者がいて、彼らの財産を守ることとも両立させなければいけない。市民と著作権者双方のバランスをとりながら、時代に合わせて法律を変えてここまでやってきた。現在の制限枠は適切だと考えている。
―――日本で著作権についての理解が進んでいるのでしょうか。
著作権の重要性についての理解の程度は以前とあまり変わっていない。著作権という言葉自体は誰もが知るようになったが、「創作者に対して(著作権料として)きちんと還元しなくては文化は発展していかない」という本質について、本当の理解が足りていないのではないか。
学校で著作権について、きちんとした教育がなされていない。例えば、無料で音楽が聞ける違法アプリがある。YouTubeの場合は、Googleと契約を結び著作権料を徴収しているが、違法アプリはそうした著作権料の支払いは一切ない。
日本は無料だったら誰でも使うという国民だと感じている。無料だから誰でも使う国と思われていること自体が恥ずかしい話でもある。かつて、中国に対して「海賊版天国」だと言っていたが、日本も同じような市場になっている。
――JASRACの徴収姿勢は権威的だとみられていませんか。
私もネット上のコメントも見て、落ち込むこともある(笑)。自分たちにそのつもりがなくても、なぜ権威的にみられるのだろうか、と感じる。
音楽を利用する方々にもっと寄り添った形で、(JASRACを)理解してもらえる方法を、全社員対象の研修などを通して進めていく。現在のいではく会長も「愛されるJASRAC」を掲げている。それを実践するために必要なことを、日々模索していく。