音楽教室のレッスン楽曲に著作権料払うべきか 東京地裁判決はJASRAC勝利、続く双方の対立

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――ただ、ヤマハ音楽教室は営利事業です。ヤマハグループの楽器拡販を担っている側面もあります。音楽教室を通じて収入を得ている以上、楽曲使用に対価を支払うのは当然との指摘もあります。

繰り返しになるが、教材作成や購入時、発表会での演奏で使用料は払っている。払うべきものは払い、レッスン演奏は公衆に聞かせる目的でないから払う必要がないとの解釈だ。

ヤマハグループの目的や理念は、音楽を使ってよりよい体験を提供することだ。その中に音楽教室というサービスもある。単に楽器を売って終わりというわけではなく、顧客満足を高めるなかで、楽器を販売と楽器を使ってもらえるようにするサービスを広げてきた。

「売るために教室をやっている」という側面を否定はしないが、それは一面的なことだ。音楽の普及と楽器の普及は車の両輪で、音楽を楽しむために演奏を学び、演奏したい方に楽器を販売するという循環だ。生徒が楽器をほしいといっているのに楽器を売らないというのはサービスとしても変ではないか。

楽器販売のために音楽教室をやっているとみられているのなら、それはわれわれの責任だ。JASRACも結局は楽器を売るための教室と思っているのかもしれないが、そうではないとアピールしたい。

音楽文化の普及に貢献してきた

――ヤマハ音楽振興会もJASRACの会員です。

JASRACについては音楽普及に向けて著作者の権利保護に尽力したことを評価している。一方で、音楽教室も音楽文化の普及に貢献してきた。特に日本における音楽教育は公教育だけでは不十分で、演奏家を目指す人はほぼ必ず全員が民間の音楽教育を受けてきた。

権利を保護するというのは利用する人がいて初めて成立する。利用が増えすぎて保護がおろそかになると、著作者が頑張ってもお金が入らない。しかし、保護しすぎてしまうと誰も使わなくなる。今回はそのバランスの話ではないか。

JASRACも定款で明確に「利用の円滑」を図ることをミッションであげている。われわれは利用されるために演奏できる人を育てるのがミッションだ。この2年はこういう戦いになっているが、JASRACとは、より大きな文脈で音楽文化をいかに発展させるかを考えていきたい。

井上 昌也 東洋経済 記者

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いのうえ まさや / Masaya Inoue

慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大メディア・コミュニケーション研究所修了。2019年東洋経済新報社に入社。現在はテレビ業界や動画配信、エンタメなどを担当。趣味は演劇鑑賞、スポーツ観戦。

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劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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