音楽教室のレッスン楽曲に著作権料払うべきか 東京地裁判決はJASRAC勝利、続く双方の対立

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――無理な法解釈がされているので引き続き争うということですか。

録音物などの完成された音楽の使用と、レッスンで生徒が練習のために同じ1小節を繰り返し演奏するような生演奏も同一視して、カラオケ法理にあてはめて解釈するのは納得できない。

著作者の権利を保護することは大事で、その点に違和感はない。音楽教室としても、教材の作成や購入時にしっかり著作権料を払っている。またレッスンの成果である発表会は公衆に聞かせる演奏であるから、JASRACの規定に基づいて著作権料を支払っている。問題はバランスであり、教室でのレッスンにも演奏権が及ぶかだ。

現行の著作権法が1971年に施行されてから、カラオケやダンス教室など録音物の使用で演奏形態の大きな変化が起き、それに対して演奏権が発生するかどうかカラオケ法理などで法解釈がなされた。一方で、音楽教室は当時から現在に至るまでレッスン形態は変わっていない。

1970年代時点で、われわれは民間の音楽事業者としてそれなりの規模があったのに当時は著作権料の支払い対象とされなかった。今さらだが、当時から音楽教室のレッスンでも演奏権は発生するといわれていれば当然払っていた。

今回の地裁判決の内容が確定すれば影響が広がりかねない。例えば塾で使われる国語の教材でも、黙読はいいが音読はダメなどほかの分野で拡大解釈されかねないのではないか。著作物の利用が萎縮する状況になれば、一番大事な音楽文化の普及・発展につながらない。法解釈で争うだけでなく、法改正を訴えるなど立法面で変えていくなども考える。

音楽教室は経営の岐路に立っている

――ヤマハ音楽教室を運営する一般財団法人ヤマハ音楽振興会は2018年度に経常収益248億円をあげていますが、費用もかさみ近年は数億円程度の赤字が続いています。音楽教室のレッスンで著作権料の支払いが生じると、経営は一段と厳しくなりますか。

当初JASRACからは売り上げの2.5%を使用料として徴収するとの話があった。その通りならば、(経営に)大きなインパクトが出る。ところが、裁判では次のような異なる説明があった。

例えば、300万円の売り上げのうち、管理楽曲を使用しての売り上げが30万円ならば、その2.5%の7500円のみを徴収するとされた。ただ、本当にそういう計算なのか。すりかえじゃないのかと正直当惑しており、不信感のようなものもある。

そもそも音楽教室は英会話教室や一般的な塾と比べて、防音設備や楽器の購入・設置など初期費用が圧倒的に高い。それに加えて少子化によって(市場が)シュリンクしている。この20年、30年で民間の音楽教育事業者の環境は厳しくなっており、大きな岐路に立っている。

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