小学校「再開」でも現場はまるで油断できない訳 感染拡大地域では休校を延長、長期化懸念も

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一方、感染拡大が続く地域では、休校が長引く恐れがある。3月19日の専門家会議では、「感染状況が拡大傾向にある地域では、一定期間、学校を休校にすることも1つの選択肢」と提言、同28日の首相の会見でも、「再開に当たってはもう一度専門家会合を開き意見を伺う」と述べた。

そして4月1日に開かれた新型コロナウイルス感染症対策専門家会議では、「現時点の知見では、子どもは地域において感染拡大の役割をほとんど果たしてはいないと考えられる。学校については、地域や生活圏ごとのまん延の状況を踏まえていくことが重要である」としている。そして、新規感染者数の拡大傾向が続く「感染拡大警戒地域」については、「学校の一斉臨時休業も選択肢として検討すべきである」と提言している。

文部科学省は、同日に臨時休校に関するガイドラインを発表し、学校内で感染者が複数出た場合や感染拡大警戒地域などの休校措置の考え方を示し、中には「臨時休校の基準」をホームページ上に公表する自治体もある。

そして感染拡大が続く東京圏や、関西圏、福岡圏などの都市部の自治体を中心に休校措置の継続を決定している。休校期間は、4月17日までの2週間か、ゴールデンウィーク明けまでとするところが多い。

オンライン学習推進も導入のハードルは高い

感染拡大防止策を講じたうえで、入学式や始業式だけ行う学校や、登校日を設ける学校、分散登校や時差登校を実施するところもある。いずれにせよ休校は設置者の自治体の判断となり、具体的な防止策は、学校現場の取り組みに委ねられる。

一方、最悪のシナリオは、感染が爆発的に拡大し、休校が長期間に及ぶことだろう。感染者が急増しているフランスでは、新年度が始まる9月までの休校が検討されている。日本でも半年以上授業が行えないという可能性はゼロではない。

「日本では学校のデジタル化が遅れており、オンライン授業の体制も整っていない。何もできないのではないか」(前出の校長)。ただ、政府は、新型コロナウイルス感染症への緊急経済対策のひとつに「遠隔教育などICT(情報通信技術)等の活用」を掲げている。すでに一部の自治体では、オンラインによる授業や学習の実施を検討しているところもある。

萩生田光一文部科学大臣は記者会見で、「コロナ長期化に備えICT活用をした家庭での学習支援の環境を整備していきたい」と語り、すべて平等に同じ環境を整えられなくても「できることをすぐにやっていきたい」と表明した。しかし、学校ごとや家庭ごとにインターネットや端末などの環境は異なっており、一気に導入を進めていくのは容易ではないだろう。

休校している学校とそうでない学校の児童の間で、学習習熟度に差が生まれるのではないかという指摘もある。感染拡大終息の気配が見えない中、教師、児童、保護者とも不安に満ちた新学期となりそうだ。

『週刊東洋経済』4月11日号(4月6日発売)の特集は「小学校 子どもが幸せになる選び方」です。
宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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