小学校「再開」でも現場はまるで油断できない訳 感染拡大地域では休校を延長、長期化懸念も

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政府は全国一斉の休校要請については、4月の春休み明けから解除する。3月19日の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議で、「感染拡大が収まっている地域では要請を徐々に解除する余地がある」との提言が出されたからだ。感染者が確認されていない地域の中には、学校を再開させるところもあった。

しかし、再開できたとしても新型コロナウイルスへの対応で学校活動が制約されるのは間違いない。それに備えて文部科学省が3月24日に「学校再開ガイドライン」を発表。しかしこれが現場を困惑させている。

登校前の検温や風邪症状の確認、手洗い・せきエチケットの徹底、換気を行い密閉・密集・密接を回避する取り組みなどを求めているが、首都圏のある公立小学校の校長は、「密集を避けろというが、40人を教室に集めるだけですでに密集となる。ガイドラインは矛盾が多く不可能に近い」とこぼす。

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「マスク装着の指導」もそうだ。そもそも入手が困難で、マスクなしの児童が続出するだろう。苦肉の策として文科省などが「手作りマスクの作り方」を紹介する事態になっている。その後、政府がすべての小・中学生に布製のマスクを配布するとの方針を示したが、洗わずに使い続ければ衛生面で懸念が生じるといった声が出ている。そもそもいつ配布されるかはっきりしないという問題もある。

学校が3月初めから休校になったことで、学習に遅れが生じている点も課題だ。4月からは前学年の授業の補習を行う学校が多く「教科書は捨てないで」と呼びかけていた。学習指導要領改訂に伴う授業をスタートさせたかったが、始まるのは少し遅れそうだ。

学校行事の中止は避けられない状況

通常の教室外の授業運営も難しい。とくに、合唱など大声を出す音楽や、密集する活動が多くなる体育はその典型例だろう。「体育の授業はどうしたら可能になるか、教員と試行錯誤しながら検討を重ねている」(前出の校長)。

運動会や学習発表会、遠足などの学校行事にも影響が出る。すでに千葉県松戸市は、感染拡大の防止と学習時間確保のために、市内小中学校の運動会や林間学校などの開催中止を決定。こうした判断をする自治体や学校が今後は多く現れるものと思われる。

なお同市は修学旅行についても「延期を含め検討」するとしているが、これは文科省のガイドラインが、「児童生徒の心情等に配慮し延期扱いにする配慮を」と求めているからだ。ただバスや鉄道で大勢が移動する修学旅行を実施できるかには疑問が残る。

また、私立小学校の学校関係者からは「学校説明会を開催できるかわからない」という声も聞かれる。さらに、文科省は毎年4月に小学6年生と中学3年生を対象に行っている「全国学力・学習状況調査」の中止を発表。2020年度中に実施するかも含め今後は未定だ。

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