コロナ治療薬「世界の救世主」探る臨床の最前線 有望候補薬は4つ、東大で感染阻止の研究も進む

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日本で新型コロナウイルスが流行し始めてから最も投与された候補薬が「カレトラ」とされる。大曲氏によると、通常の治療結果を研究に生かす「観察研究」という形で、54人(3月1日時点)に投与されたという。アメリカの製薬会社アッヴィが抗エイズウイルス治療薬として開発した。ウイルスの増殖を抑える効果があり、SARS、MERSへの有効性が示唆されてきた。

中国では流行当初からカレトラを感染者に投与し、中国メディアが新型コロナウイルスに有効と報道してきた。しかし、アッヴィは3月9日時点では「中国の臨床試験に関する情報を入手できる状況になく、報道の正確性について確認できない」とするコメントを発表し、冷静に見ている。

さらに3月に中国での論文が、有力医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載された。これによると、カレトラの服用者99人と標準ケア(通常どおりの標準的な治療)の患者100人を比較したところ、症状改善の時間に有意差はなかったとしている。つまり、有効性はないという結論となる。

ただし、この論文だけでカレトラが新型コロナウイルスに効かないと結論づけるのは早計かもしれない。大曲氏は「いろんな議論がある。(論文の)サマリーだけ読むと否定的な書き方だが、よく読み込むとまだまだ検討が必要」と述べる。どのような病態や使用時期なら治療効果があるか見極めるには、さらなる症例の蓄積が必要だろう。

喘息薬の「オルベスコ」がウイルス増殖を抑制か

また、急遽、候補薬に挙がった薬剤に「オルベスコ」がある。帝人ファーマが開発した喘息に使う吸入ステロイド剤で、神奈川県立足柄上病院らのチームが3月初旬にオルベスコを投与した患者3人の症例を報告し、脚光を浴びるようになった。クルーズ船に乗っていた高齢感染者の症例報告で、オルベスコについて「ウイルスの早期陰性化や重症肺炎への進展防止効果が期待される」と評価している。

大曲氏は、オルベスコは「ウイルスを抑える効果はないと一般的に思われているが、コロナウイルスの増殖を抑えるということが見出された」と語る。国立国際医療研究センターは、肺炎の症状がない感染者にはオルベスコを投与する方針にある。

この4候補薬以外では、古くから使われている抗マラリア薬「クロロキン」が候補薬として検討されている。

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