コロナ治療薬「世界の救世主」探る臨床の最前線 有望候補薬は4つ、東大で感染阻止の研究も進む

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「試験管内のデータだが、ウイルス増殖に及ぼす効果を評価した実験で、さまざまな抗ウイルス薬のなかでレムデシビルは最も効果を示した。人間に投与されたときの安全性に関しては、エボラの治療に使ったときの(安全性の)データがある。今回の感染者に対してレムデシビルを投与する妥当性はある。標準薬がなく時間も限られるなかで治験をするには、まずレムデシビルから医師主導治験をするのが筋だろう」

レムデシビルに関しては、中国も中日友好医院(北京)を中心に臨床試験に着手しており、4月にも結果が出る見通しだ。また、ギリアドも2月、企業による臨床試験に乗り出しており、5月にも一定の結果を公表する予定にある。国立国際医療研究センターでの開発はレムデシビルを先行するため、4つの候補薬のなかでは最も期待が集まりそうだ。ただし、効果が認められたとしても、承認手続きや輸入手続きなどで、通常の治療で使われるようになるには時間がかかる。

日本発の「アビガン」は200万人分を備蓄も副作用あり

また、安倍首相が繰り返し候補薬に挙げるのが、日本発の抗インフルエンザ治療薬「アビガン」だ。富士フイルム富山化学の製品で、ウイルスの増殖を防ぐ効果があるため有力候補として注目されている。

ただ、動物実験で胎児への副作用(催奇形性)が報告されており、妊娠中の女性に投与できない。ほかの薬が効かないような感染症が発生し、国がゴーサインを出したときに限り投与されることになっている。国は新型インフルエンザの流行に備え、約200万人分のアビガンを備蓄しており、今回の新型コロナウイルスによる投与もこの備蓄分から提供された。

3月17日には、中国科学技術省がアビガンの後発品で有効性を示す臨床試験の結果が得られたと発表して話題となった。「治療の効果は明らか」(中国科学技術省)とし、中国の製薬大手である浙江海正薬業でアビガンの後発品を量産する方針を示している。

もっとも中国で有効性が示されたからといって、すぐに日本で標準薬として投与されるわけではない。橋本岳・厚生労働副大臣は、中国での結果について「(日本での)研究の結果がどうなるのか、予断を与えるこということも、我われは控えるべきだ」(3月19日・衆院農林水産委員会での答弁)と慎重な姿勢だ。

日本では、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の患者を多く引き受けた藤田医科大学病院(愛知県)で無症状・軽症患者を対象とした臨床試験が始まり、8月にも終了する見通し。群馬大学医学部附属病院でも臨床試験を計画中。富士フイルム側は企業主導で臨床試験を検討している。

期待が高まるアビガンだが、日本で有効性を裏付けるデータを得るにはもうしばらくかかりそうだ。

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