必要なのは半歩ずつの歩み寄り、人との違いを意識することが第一歩--ダイバーシティ最前線・パナソニック電工
このようにダイバーシティの本来の目的は多様な価値観を取り入れ、組織を活性化することだ。ただ、多くの日本企業では女性活用が遅れているため、女性を対象にした活動から進める場合が多い。パナソニック電工も当初は女性活用推進のみを進めていた。
地区委員会の活動でダイバーシティ推進を決意
川原さんも参加していた地区委員会では、女性が働きやすい環境作りややりがいを持って仕事ができるような活動に取り組んでいた。男性や管理職などさまざまな社員もかかわり、講演会やグループ会、小規模なフォーラムを定期的に開催した。
育児中の女性社員をお昼休みに集め、「子供が熱を出したらどうするか」といった情報交換会を開き、コミュニケーションを深めることなどがその一例。異動がほとんどなく、他の仕事を知らない女性も多いため、他部門の責任者による事業説明会を行ったりもした。
こうした活動で女性社員の話を聞くうちに、川原さんは女性と男性上司とのコミュニケーション不足によるすれ違いを感じるようになった。
女性社員の8割以上を占める一般職相当や工場勤務の技能職の社員は、これまで意見を求められることがあまりなかった。長い間の積み重ねで、不満や問題点があっても言えない人が少なからず存在した。中にはずっと我慢して最後に爆発するケースもあった。
女性だけではない。川原さんの目には、上司の側も女性社員同様に思ったことが言えていないと映った。女性部下への接し方に不慣れな男性上司も多かった。「お互いがもう半歩ずつ歩み寄ってコミュニケーションすれば、さまざまな問題が改善する」と思いながら、自らも現状を変えることができないもどかしさを感じていた。
「自分と他人は違う」と意識することで前向きに
そうした中、05年に女性躍進推進室の専任担当者の公募があった。通常こうした公募はイントラネットに掲載されるだけだったが、この時は全女性社員にメールで告知された。会社が本気で女性活用を進めようという意思表示だった。