必要なのは半歩ずつの歩み寄り、人との違いを意識することが第一歩--ダイバーシティ最前線・パナソニック電工
地区委員会の活動で感じていた問題を「少しでも改善したい」と川原さんは応募を決意。男性を含め20人弱の応募者の中から見事選ばれた。希望どおりの部署に異動になったものの、専任の担当者は1人だけ。当初はなかなか思うようにはいかなかった。
異動してすぐ、女性役職者数を増やすなどの新制度の説明を行うため、全国29カ所の地区委員会をほぼすべて1人で回った。その説明の場で一部の男性社員から批判を受けた。多くが、「女性役職者を増やすような制度は逆差別だ」などの不満。「能力が足りない女性役職を増やすのか」といった誤解も少なくなかった。
女性はあまり異動を経験せず、男性のように飲み会、ゴルフ、会社のタバコ部屋などのネットワークも十分でない。
「今後の会社には女性の視点が欠かせない。情報量を補うフォローは絶対必要」「劣るレベルの女性をマネジャーに登用することはない。必要とされるレベルは男女とも共通で、女性がそれを超えることができるよう支援していく」と訴えた。
説明する際に気をつけたのが、「社長や人事担当役員が言っているから」といった言い方をしないこと。なぜ女性活用が必要なのかを自分の言葉で話した。粘り強く説明し、少しずつ納得してもらった。
川原さんはダイバーシティの基本は「自分と他人は違うと意識すること」と考える。「根っからの楽観主義で、落ち込んでもあまり引きずらない」が、孤軍奮闘の中、つらい日もあった。しかし、「自分と他人は違う」とつねに思い起こすことで、「違うのだから意見が異なるのは当然。それをどのように説得していくか」という前向きな対応ができるようになっていった。
日々の仕事を通して、すばらしい出会いも数多くあった。各地区を回る中、ほとんどの社員は温かく迎えてくれた。共通の経験がある他社の担当者とは情報交換やお互いの悩みを相談しあったりした。社内外の多くの人の支えが何よりのパワーとなった。