人気爆発「競技かるた」が直面する悩ましい問題 "全員がアマチュア"という世界で必要なこと
松川:私は昔、先輩からよく「競技かるたは1銭にもならないけど、奥の深いものだからそれで元は取れる」と言われていたんですよね。もちろん、私もそういう気持ちでやってきました。競技かるたに限らず、マラソンやサッカー、テニスなど、すべての競技がもともとは人間の“遊び心”でスタートしたものじゃないですか。
ただ何かで一番になりたいという“遊び心”。そこに賞金がどういった形で刺激を与えるのだろうと非常に興味を持っています。これまでとは違ったエネルギーが生まれるんじゃないですかね。結果はすぐにはわからない。5年後、10年後に表れるのでしょう。
楠木:賞金大会で恩恵を受けるのは優勝した選手たちだけにとどまらず、競技かるた界全体に還元されていくのではないかと。例えば、有名な選手たちが賞金を基に地方へ遠征し、かるたの魅力を広める。それによって、メジャーな大会に出場することを目標に競技かるたを始めた子たちが、また賞金を手にしてかるたの普及に努めるなど、今回の試合は大きな可能性を秘めていると思っています。
一般の人が楽しめる、“見る”競技かるたの創意工夫を
――今回の「ちはやふる小倉杯」をきっかけに、初めて競技かるたを見る方も増えていくと思います。一般の方には、どういうところに注目して欲しいですか?
末次:見る側に求めるというよりも、自分たちが改善していくことのほうが大事だと思っています。今回の「ちはやふる小倉杯」でもYouTube配信を通して、より多くの方に見ていただけたと思うんですが、名人・クイーン戦のようにスロー再生があるとか、札の枚数表示がされるわけではないんです。やはり競技かるたは、やらない人がすぐにルールを理解するのは難しい部分がたくさんある。それをわかりやすくすることで、見る側のハードルを下げたいです。
楠木:教員をしている中で、子供たちがたまに「先生が試合している映像を見たよ」と声をかけてくれるんですが、どうやら全部いい加減に札を飛ばしていると思っているみたいで(笑)。ちゃんと暗記して狙いを定めていることを説明して初めて、「すごい!」と感動してくれるんですよね。
だから、例えば将棋の感想戦のように、選手同士が自分たちの対戦映像を見ながら互いのプレーを評価する場面があれば、より奥深さが出る。そうやって競技かるたの頭脳プレーを楽しめる工夫をすれば、自ら競技かるたをせずとも試合に応援に駆けつける人たちも増えると思います。
松川:競技かるたを長年やっていると、何となく「この流れでいくと、今度はこの辺りの札が出るな」という勘が働くんですよ。だから結果論ではなく、解説者が次の札を予測する競技かるたがあっても面白いかもしれないですね。
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