人気爆発「競技かるた」が直面する悩ましい問題 "全員がアマチュア"という世界で必要なこと
――楠木さんと松川会長は、『ちはやふる』が登場した後のかるた界が変化した実感はありましたか?
楠木早紀(以下、楠木):たくさんありましたね。これまでも競技かるたを題材にした漫画というのはあったんですが、『ちはやふる』は何といっても絵が可愛い。そして、物語の中には、恋も友情もあって。誰もが物語を楽しみながら読むうちに、かるた=競技かるたという知名度が抜群に上がったと思います。大人だけではなく子供たちも、かるたと聞いていろはかるたではなく百人一首をイメージする人が増えていると感じます。それがとてもうれしいです。
松川英夫(以下、松川):かるた界の変化はもちろんですが、『ちはやふる』によって、何かをひたむきに頑張ることの素晴らしさが若い世代に伝わったと思いますね。かるたを通じて仲間を得ることの幸福。その仲間たちとただ仲よくするのではなく、ライバル意識を持って切磋琢磨する青春の輝きが詰まっている物語だと思います。
お世話になった競技かるたの世界に恩返しをしたい
――今回「ちはやふる基金」を立ち上げた経緯を教えてください。
末次:漫画のクライマックスシーンを描く中で、「私はお世話になった競技かるたの世界に、これでお別れしてしまっていいのだろうか?」と考えるようになったんです。
そんなとき、漫画の影響で競技かるたを始める子たちが急激に増え、大会を運営する人員が不足しているという課題を耳にしました。だとすれば、場を荒らすだけ荒らして去るという選択はできない。競技かるたに恩返しするために、何か支援する仕組みが作れたらと「ちはやふる基金」を設立しました。私には漫画しか描けません。それでも私の漫画を愛してくれる人たちがいるなら、この力を最大限活かしたいと思ったんですよね。
――現在は、どんな支援の仕組みを考えていますか?
末次:まずは、競技かるたの魅力を発信すること。そして、頑張っている選手たちを応援するため、第一歩として「ちはやふる小倉杯」に協賛し、優勝賞金100万円を提供させていただきました。今後はかるた界の皆さんに何が必要なのかをヒアリングしつつ、支援の方法を模索している状態です。
楠木:競技かるたにはプロが存在せず、私たち選手は皆アマチュアです。確かに競技かるたは高額な道具を準備する必要はないし、札と読む人がいれば、すぐにでもかるたは始められるんですよ。
だけど、腰を据えて上のレベルを目指そうと思った途端に、さまざまな費用がかかる。例えば地方に住んでいる人間からすると、遠征費だけでもかなりの額がかかります。だからこそ、大会で優勝するという目標の先に賞金があるのは1つの魅力になると思いますね。
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