5G導入が激変させる「エンターテック」の将来像 ライブエンタメ変える新技術を専門家が伝授

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5G時代のアーティストは、音楽以外にもさまざまな表現を求められる必要があり、スター街道を駆け上がるには、一見難しい状況であるように思える。だが、意外にも鈴木氏の見解は対照的であった。

鈴木貴歩(すずき たかゆき)/パレードオール株式会社・代表取締役。エンターテック・アクセラレーター。エンターテインメント、テクノロジー領域のコンサルティング、メディア運営、イベント主催、海外展開支援などを行っている(写真:白鳥純一)

「職人気質のミュージシャンたちの職を奪うことにはならないと思いますが、より簡単に音楽を制作できることは確かでしょう。

例えば、鼻歌だけ歌って、機械が1曲仕上げてくれるとかはできるようになると思います。類似のアプリは、すでにリリースされていますし。今後は、『誰でもアーティストの時代』とでもいいますか、音楽を表現する場所にも可能性が出てきましたね。

TikTokでブレイクしアメリカのビルボードランキングの連続No.1記録を塗り替えたラッパーのLil Nas X(リル・ナズ・X)の楽曲『オールド・タウン・ロード』は、ネットで売られているビートに、ラップと歌詞を載せているんです。近い将来、この概念がさらに発展して、AIが曲を作るところまで到達すると思います」

ミュージシャンを目指す人や作品を発表する人に、新たな活躍の場を提供することになる5G時代。だが、音楽の楽しみ方にも、変化を与えることになる。

「お茶の間目線で見ると、将来的には、カラオケとライブビューイングの進化が期待できるんじゃないかと思っています。自宅にいながらにして、VRを使って東京ドームで歌っているような感覚になれたり、友人や家族とリラックスしながら好きなアーティストのライブをリアルタイムで楽しんで、デジタル拍手や投げ銭などで交流も楽しめたりすると考えています。

それ以外にも、ここ1、2年のVRライブが立ち上がった時期の後、今後数年で誰でもVR空間のイベントを作ることができる時代が来ると思います」

まもなく到来する5G時代と、今後の発展について、鈴木氏はこのように締めくくった。

「エンタメが産業になるために大事なことは、お金の流れが生まれることと、エコシステムの構築です。例えば著作権など、すでに存在する法律やシステムを考えながらビジネスを作り出していかないと、『エンターテックはカルチャーを作る』というレベルにまでは達しないだろうと思っています。

『ライブのクラウド化』は、主に素材を持つ権利者側に訴えかけていることなんですが、テック側と権利者側がより有機的につながったら、ここから無限の可能性が一気に開けると思っています」

苦境のライブエンタメ業界の起爆剤になるのか

新型コロナウィルスの影響でアーティストやエンターテインメント業界はライブの自粛要請がなされ、ほとんどが中止に追いこまれた。まさに大きな試練の時を迎えている。世界的にライブエンターテインメント、フェスティバルが中止、延期を余儀なくされていて、今後の見通しも不明瞭だ。

5Gやほかのテクノロジーがこうした状況を改善し、新たなビジネスモデル、新たな表現を後押ししていくことが「エンターテック」にできる、重要な役割なのかもしれない。

5Gによる通信環境の進化は、必ずエンターテインメントの楽しみ方の選択肢を拡げ、4G x 音楽ストリーミングが海外でもたらしている“音楽産業の復活”を、ほかの音楽ビジネスの領域にももたらすことができれば、その可能性に期待は高まるばかりだ。

池田 鉄平 ライター・編集者

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いけだ てっぺい / Teppei Ikeda

Jリーグ、国内、外資系のスポーツメーカー勤務を経て、ウェブメディアを中心に活動。音楽一家で育ち、アーティストとしてインディーズでアルバムリリースも経験。スポーツ、音楽、エンタメを中心に取材活動を行っている。

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