5G導入が激変させる「エンターテック」の将来像 ライブエンタメ変える新技術を専門家が伝授
5Gが音楽の何を変えるのか? 例えば、「ライブのクラウド化」だ。
「XR =VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合)といった、まるで現実であるかのような体験をさせる空間に、AI(人工知能)による演出を交え、それらをブロックチェーンで権利を管理する、という3つのテクノロジーが組み合わさって、新たなエンターテインメントが生まれてくると思います。
でも、端末が行き渡らない限りはカルチャーにはならないので、社会の変化を感じ取れるようになるまでは、もう少し時間はかかる。どちらかというと、最初の5年くらいは、映像や音楽のコンテンツのクオリティーが上がっていくという方向に変化が見られるのではないかと思います」(鈴木氏)
鈴木氏によると、例えば初音ミクのホログラムライブのようなイベントが、現実のアーティストでも見られるようになるそうだ。それは何も存命のアーティストに限らない。
過去にはX JAPANのライブにhideがライブにホログラムで出演したこと、海外でマイケル・ジャクソンや2PACなど、すでに鬼籍に入ったアーティストのホログラムライブツアーが増えてきていることなどを挙げ、5Gのサービス開始によって、その動きはさらに加速すると分析する。
「ライブが複製できるようになるのがこれからの時代です。すでにそれが始まりかけている。そしてそのために欠かせないのは、今までの時代に活躍したアーティストや楽曲、すなわち『レガシー』ではないかと思っています。
1950年、1970年代は、それぞれ『ベビーブーム』世代です。人口の多い世代に向けたビジネス、エンターテインメントを発展させるために『レガシー』は必要な要素なんです。
でも、『レガシー』が復活すると、若者世代にもすばらしい文化が受け継がれていきますよね。日本でも1960~1990年代の人気アーティストの楽曲をストリーミングでいつでも聞けるようになってきている。『レガシー』と新しい世代が結び付けば、相乗効果を生むのではないかと思います。5G時代にどのような変化が生まれるか、今から楽しみです」
ホログラムライブに可能性、システム構築に課題
2019年の紅白歌合戦では、美空ひばりさんのAIが登場し、新曲を歌ったことが大きな議論になった。5G時代のエンターテインメントの将来像や、それらを実現させるための課題はどこにあるのだろうか。
「個人的には、AIで『レガシー』をよみがえらせることができたらすばらしいと思います。でもその場の感動があっても、数回のTVの企画で止まってしまうとなかなか産業にはつながりにくい。
一方、ホログラムライブはすごく可能性がある。すでに複数のアーティストが世界ツアーを行い、1人のアーティストが同時に複数箇所で何公演も行うこともできますし、エンタメを楽しむ機会を増やし、産業を活性化させ、人々のカルチャーも豊かにするでしょう。現実的なエンターテインメントと、テクノロジー、レガシー、そして仮想世界のエンターテインメントをつなげることで、グローバル化に進んでいけたらいいと思います」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら