株の大暴落は一体いつになったら止まるのか 株の乱高下が大暴落をもたらす「5つの理由」

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第5に、これとは逆の相関もあり、株価が下がること自体が恐怖感をもたらす。つまり「下がったらどうしよう」という個人投資家、パフォーマンスが低下すると解約されるファンドのファンドマネージャー、そのほかあらゆる株式投資関係者が恐怖に包まれる。

そうなると売りが売りを呼び、下落幅が異常に大きくなる暴落となる。恐怖と下落の連鎖であるが、株価の減少としては、暴落があった時ほど変動が大きくなるのである。それは恐怖から過度に暴落するから、少しのことで大きく戻すということが起こる。

今も起きているように、少しでもいいニュースが出たらすぐにそれに飛びつき、株価は急反発する。しかし、市場全体は恐怖と悲観が支配しているから、次に少しでも悪いニュースが出るか、あるいはいいニュースが次には何もなくなると、すぐに恐怖が舞い戻り、上がった分、すぐ下がり、この下がりが恐怖感をもたらし、下落が下落を呼ぶ。だから、乱高下しながら下がっていくのである。

これが、乱高下の時に株は上昇せずに下落する理由であり、乱高下とは、暴落と一緒に訪れるのであり、乱高下は暴落と同義語となるのである。

恐怖感がないとき、悲観が市場を支配していないときは、乱高下が起きないのであり、VIX指数という変動の指数が恐怖指数と呼ばれることになったのである。実際の統計でも、VIX指数とS&P500株価指数は負の相関関係がある。

プログラム取引のメカニズムは「グレーな部分」がある

しかし、最後に、もっとも重要なのは、昨今のプログラム取引が変動と暴落を加速しているという批判は正しく、そのメカニズムは不正とまでは言い切れないが、グレーな取引が存在していることである。

株価が暴落すると恐怖感が高まり、下落が下落を呼び、変動予想は高まり、VIX指数は急上昇する。VIX指数自体を取引する金融商品があるから、これは大幅に値上がりする。

つまり、株価指数先物とVIX指数先物の両方を取引するプログラムトレーディングにおいては、統計的にも現実的にも、負の相関を前提に取引を行う戦略は儲かる可能性がある。だから、それがプログラム的に織り込まれると、株価の下落とVIX指数の高まりの相関がスパイラル的に高まり、それと同時にこのプログラムが利益を上げ、さらにこのスタイルの取引が加速される。

これが、売りが売りを呼ぶのと同様に、乱高下が下落を呼び、下落が乱高下を呼び、それがさらなる大暴落をもたらし「1000ドル、2000ドルは当たり前」という歴史的にありえなかったことが現在頻繁に起きている理由である。これが相場操縦に当たるかどうかは非常に微妙なところであり、過去にも論争になったことがある。

したがって、乱高下が続く限りは、下げどまらないのである。

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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