「子どもを叩きそうな自分」に気づき止める方法 時間に追われ追い詰められる親たちへ

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では、2番目のママの声の「叩くと宣言したのちに、守らなければ叩く」というのはどうでしょう?

いきなり叩くのではないですから一見いいように思えるかもしれませんが、叩くと宣言して従わせようとするのは威嚇や支配にあたります。言ったのに守らなかったからという理由で叩いても、それはなぜ守らなければならないことなのかは伝わりません。

また、3番目の「手を叩く」というのもNGです。「この手が悪い」と言っても、手も子どもの一部。痛みで従わせようとするのは、子どもの権利に反する行為です。なぜその行動が悪いのかという根本を理解させるためにも有効ではありません。暴力は大小にかかわらず、どんなときにも必要ありません。それよりも、子どもが自分で考えて行動できるベースとして大事なのは、安心できる親子関係です。

子どもと作り上げていく前向きな子育て

確かに、忙しいとき、子どもが思いどおりに動いてくれないと、いら立ってしまいます。ですが、子どもに親自身の気持ちは伝わっていませんし、親が勝手に枠を決めて、そこに子どもをはめようとしているだけではないでしょうか。

日本ではブラック校則が話題になっています。私が北欧などの取材で出会った子どもたちは、学校でも自由な髪形をして、自由な服装をしていました。小学生でもピアスをしている子もいました。子どもの意思を尊重し、それを認めていこうということが国の考え方のベースとしてあるので、誰も問題視しません。

そもそも日本の「しつけ」の考え方が、「親(大人)が決めた枠にはめようとする」というところに基づいているので、子どもがその枠にはまらない行動や発言をするといら立ち、腹を立て、つい怒鳴りたくなったり、叩きたくなったりしてしまうのではないでしょうか。

もちろん、親は子どもより長く生きてきていますし、経験値もあります。だから、子どもの考えや選択について、不安になったり、「うまくいかないのでは?」と懸念を持ったりすることもあるでしょう。そのために、アドバイスしたり、経験談を話すことはとても大事ですばらしいことです。

でも、子ども自身も、自分の気持ちや考えを持っています。子どもの気持ちや考えを聞きながら、親としての考え方も伝えて共有する。子どもが迷ったときには、どうしたらいいのかを一緒に考え相談しながら、見つけていく。そんなやりとりをして方向を決めていくことが、私が考えるポジティブな子育てです。

先ほどのコメントにもあった「ご飯で遊ぶ」という行為も、叩かず「投げちゃダメだよ」と制すればいいですね。投げるのをやめなければ、食べることへの興味がなくなっている可能性もあるので、「もうおなか一杯かな、ごちそうさまにしよう」とご飯を終わりにするなどの対応もあるでしょう。子どもの気持ちや成長を考え、「食べ物の感触を手で確かめたい年齢なんだ」「成長の過程なんだ」と解釈することで、ママの心が軽くなるかもしれません。

「いえいえ、うちの子はもう物事の善悪はわかる年頃なのに、何度“ダメ”と言ってもやめないんです」というお家もあるでしょう。

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