1980年代から日本映画はどう変わったのか

大森一樹監督が語る映画人生と銀幕界の変遷

――プロデューサーがビジョンを示したということですね。

『トットチャンネル』 (c)東宝

僕も大学で教えてから10年くらいたちますけど、最初は学生にも自由に好きなものを撮れと言っていたんですよ。でも、だんだんそれじゃ駄目だということがわかってきた。最近は、課題を与えると、そのほうがいいものができることが多い。彼らに任せたら、ひどいときはできないからね。やっぱり映画というのは、好きなものを好きなように撮ってたらできないですね。

映画とは「観念」と「表現」である

――その話は興味深いですね。

これは大学で言っていることなのですが、映画というものは「観念」と「表現」であると。「観念」は自由自在だけど、大学では「表現」を学んでいるのであって。ここは哲学科や文学科ではなく映画学科なので「表現」について学んでほしいと。「観念」については、われわれが口を挟むつもりもないし、今の若い人が考えてることに還暦を過ぎた年寄りがああだこうだと言うつもりはない。それは卒業してからやってくださいと。ここで表現力を覚えたら、いつでも映画はできますよ、と。やはり観念だけで映画を作ると駄目ですね。

――プロデューサーさんとの出会いは大きいですね。

それとスタッフとの出会いですね。『テイク・イット・イージー』は、日活系の撮影、照明などが全部ついた映画なんですよ。それで、そのときに感心したのが、全員が脚本を読んでいることなのです。自主映画のときは脚本を読んでるのなんて自分だけでしたから(笑)。それって当たり前のことですけども、みんな映画のことについて考えているんですよね。自分がわかっていればいいやと思って、人物のサイズを決めるのですが、そうすると「いや、違う。このセリフなら、このくらいのサイズじゃないといけないんだよ」ということを教わるのです。だから面白かったですね。なるほどねと感心することが多くて。

だからこの3本(吉川晃司主演の『すかんぴんウォーク』『ユー★ガッタ★チャンス』『テイク・イット・イージー』)で、映画監督ができるようになったと思うんです。よく助監督経験がないからとか、いろいろ言われますけど、監督を3本やればなんとかなるということですよね。

――それからすぐに斉藤由貴主演の3部作が始まりました。

『恋する女たち』がえらい評価されているのですが、僕は『トットチャンネル』のほうが完成度が高いと思っているんですよ(笑)。これはテレビの創世記の話ですね。そして今回、特別上映される斉藤由貴主演の「女優時代」は、16ミリのネガが残っていたんですよ。これは乙羽信子さんの話なんですよ。

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