1980年代から日本映画はどう変わったのか

大森一樹監督が語る映画人生と銀幕界の変遷

――それでは、今回上映するそれぞれの作品についてコメントをいただきたいのですが。

そもそも僕はデビュー作の『オレンジロード急行』以前の自主制作映画は、上映したくないんですよ。でもスタッフから、これはいるんじゃないですかと言われてね。そういった意味で「参考上映」という扱いにしているのです。時々、学校の授業で見せたりするのですが、今どきの学生はうまいですからね。機材もそろっているし、また、素人俳優がうまいんですよ。僕らなんて、友達を出演させているから、セリフも棒読みでしたよ。一応、『オレンジロード急行』がメジャー第1作ということではあるのですが、この間、あらためて見たら、ある意味、自主制作映画の集大成という感じの作品だなと思いました。

――それから監督の映画を語るうえでは欠かせない『ヒポクラテスたち』ですが。

これこそ自分としては、もういいんじゃないかという作品ですよ(笑)。最初の自薦案から外れていましたから。これよりは『オレンジロード急行』のほうがいいなと思ってしまうんですけどね。

今の若者にも響く

――でも、自伝的要素がある作品と言われてますから、思い入れもあるんじゃないですか?

これも学生に見せると、これはいいと言ってくれるんです……。今の若い人とは、時代も違うし、環境も違うし、俳優さんだって知らない人ばかりだろうに。それからいちばん驚いたのは、地方の医師会の講演のときに、これを見て医者になろうと思ったという人がいて、ビックリしたんですよ。やっぱり医者になろうという映画って(黒澤明監督の)『赤ひげ』なんですよね。でも『ヒポクラテスたち』は『赤ひげ』と真反対にある映画なのに、どうしてあれを見て医者になろうと思ったのか……。

僕はむしろ(日本テレビで1985年に放送された)「法医学教室の午後」のほうをやりたかったんですよ。プリントネガもありましたからね。だから本当にもう一回できますよ、レトロスペクティブ第2弾が。われながら、作った映画の数が多いですからね。最初12番組と聞いたときは、そんなもんかなと思っていたけど、いざ選び始めたら、ほとんどの作品が落とされてしまいました。

――そして村上春樹さんのデビュー小説を映画化した『風の歌を聴け』。

これは今見ても色あせない。これなら今の学生に見せてもどうだ、という気持ちがありますよ。この本は、村上さんの本の中でも毛色が違うんじゃないかと思うんですよ。どちらかといえば詩というか、エッセイのような感じの本でした。だからけっこう自由にやれたという部分はありますね。とにかく変な映画ですよね。今まで僕は30本近く映画を作ってきたのですが、自分の企画というのはなかなかないんですよ。ほとんどが、どこかからの発注を受けて作った映画ばかりですからね。今回の特集上映で言うと、『風の歌を聴け』と『満月 MR.MOONLIGHT』、それから『緊急呼出し エマージェンシー・コール』の3本だけですよ。最初から自分がこれをやりたいということで、やり始めたのは。それでも全部当たらなかったですね(笑)。だから企画は駄目だなと思っているのです。

――そして次が吉川晃司主演の『テイク・イット・イージー』ですね。

『風の歌を聴け』がそうでしたが、自分で企画するとコケるから、発注を受けてから作るほうが、合っているんじゃないかなと思ったんですよ。それが楽しかったというかね。僕たちは1960年代、70年代の映画を観て育ったわけですが、東宝の田中友幸さんみたいに、その頃のプロデューサーがまだ映画界に残っていたんですよね。彼らは新しい監督とやりたいということで、尊敬する大プロデューサーたちとご一緒させていただいたわけです。そこで「ああ、そうやって作ってたんか」と、映画作りについて教わったわけです。彼らは「どういう映画を撮りたいですか」なんて聞いたことがなかった。むしろ向こうの要求、こうやりたいんだということを聞いて、そこからどういう映画を作ろうか考えましたからね。

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