――本作の公開は東日本大震災から3年が経ったタイミングに重なります。
世間の雰囲気としては、震災の記憶がどんどん薄れていって、風化しているようにも感じます。それから、震災とこの原発の問題は、明らかに違う問題として考えなければいけません。心の問題は別として、震災の被災地は、神戸もそうだったように、復興することで希望が持てることがあると思うのですが、福島に関しては、少なくともあと数年間は復興すらできないのではないかという実感があります。
――野田佳彦元首相が2011年の暮れに福島第一原発事故の「収束宣言」を発しましたが、この作品でそれを意識した部分はありますか?
実はもっと前からこの作品の脚本を書き始めていたので、「収束宣言」がきっかけということはありません。ただ「収束宣言」という面に関しては、放射線の数字レベルで帰村できるようになったとしても、実際に帰村されて、生活が元どおりになるかというと、それは無理があると思います。たとえば小さなお子さんがいるご家族なんかが「戻ってもいいよ」と言われたとしても、なかなか戻れないですよ。何を信じたらいいのかわからないですし、若い人が戻れない場所は、やっぱり町として成立しないですよね。老人たちだけで生きていけるのかといえば、それはなかなかに難しいですから。そういう意味では収束どころか、何も変わっていないというふうには思います。
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