日本はいつの間にか夢が語れない国になった 『東京難民』佐々部清監督が語る日本社会の歪みとは

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 格差社会のゆがみの中でもがく若者たちのリアルな姿を、真正面からとらえた衝撃作『東京難民』が2月22日より全国の劇場で公開される。
 父親が失踪し、学費の未払いを理由にいきなり大学を除籍された大学生の修が、部屋から閉め出され、一夜にしてネットカフェ難民になってしまう。ネットカフェで日払いのバイトを探し、食いつなぐ修。治験のバイトで高額を手に入れるも、夢をかなえるはずの大都会には、底なしの貧困と孤独の荒野が広がっていた――。主人公の時枝修には中村蒼。そのほか、大塚千弘、青柳翔、山本美月、中尾明慶、金子ノブアキ、井上順ら豪華キャストが集結。脚本は『あなたへ』で高い評価を得た青島武が務めている。
 監督は『半落ち』『ツレがうつになりまして。』の佐々部清。福澤徹三の原作を基に、バイオレンスやエロスにも果敢に挑戦、新境地を開いた佐々部監督に、格差社会にもがく若者たちについて思うところを聞いた。

  ――これまでの佐々部監督の作風と比べると、180度違うハードな作風が印象的でした。資料によると、脚本の青島武さんから「この作品をやったらどうか」と薦められたそうですが。

やったらどうかというよりも、「佐々部のやるような、いい人しか出ない、ほんわかしたのはもういいでしょう」と言われたということです。「自分が脚本を書くのなら、こういうのがやりたい」と青島さんが持ってきた原作でした。だからあまり僕がやらないものを、やろうということで始まったのが今回の企画です。

――最初は若者が堕ちていく話にあまり共感できなかったとのことですが。

原作を読んで、この主人公はどうしようもないやつだなと思いました。そんな人物を主役に、商業映画としてどうやって撮ったらいいのかと。基本的には僕はドキュメンタリーの監督ではなく、エンターテインメントをやりたい商業映画の監督だと思っているので、読んでいる最中はそこが引っ掛かりました。でも、あの青島武さんが薦めるものですから、最後まできちんと読まなければと思ったわけです。

この小説を最後まで読んでいくうちに、いつの間に日本がこんな夢が語れない世の中になったのだろうと思うようになった。僕も(主人公と同じ)地方から出てきた大学生でしたが、当時は4畳半一間のアパートで、お風呂もなく共同トイレの生活でしたが、それでも僕のアパートに集まったやつらが、「監督をやりたい」「役者をやりたい」なんて夢を語り合っていたわけです。

しかし、今は物が豊富なのに、人と人とのコミュニケーションが非常に貧しくなってきている。そういう意味で、自分の中の切り口が「今の日本はこういう国なんだよ」ということを伝えるということにあるならば、エンターテインメントとしてやれそうな気がしたのです。

(C)2014『東京難民』製作委員会
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