無職の若者の実態を調査してわかったこと 『若年無業者白書』を作ったわけ(下)
「PCが無業期間を長期化」の真実
西田:今回、『若年無業者白書』を制作し、メディアも含めて多くの反響がありました。ただ一方で、「パソコンを持っていると、無業期間が長期化する」「携帯電話を持っていると無業期間は短期化する」という記事が出るなど、ややミスリーディングかつセンセーショナルなかたちの取り上げ方も多い印象でした。
ただし、これは間違いです。『若年無業者白書』は、2つの値の関連性を表す「相関関係」についての定量分析のデータであり、原因と結果を表す因果関係の分析には、もう少し丁寧な分析が必要になります。また今回は支援を受けている人たちを対象にしたデータを使っています。そのため、「携帯が無業期間を短くする」「PCが長期化する」ということまでは言えません。他方、「相関関係」の意味も含めて、もう少し丁寧に説明すればよかったかもしれないとも反省しました。
工藤:「母数」や「バイアス」について、もっと丁寧な説明をすべきでした。因果関係と相関関係が混同し、「PCを持たせるのをやめて、携帯を持たせろ」となると、ミスリードしてしまうリスクがあります。現場でさえ、「インターネットにつながっていないから無業になったのか」「無業の人がインターネットにつながっていないことが多いのか」わからないのです。メディアで報じられたセンセーショナルな見出しに引っ張られてしまったことは反省しなければなりませんし、地道に説明責任を果たしていきたいと思います。
今回は、育て上げネットで支援している約2300人について、求職活動を行っている「求職型」、求職への意思は持つが求職活動は行っていない「非求職型」、求職への意思を持たない「非希望型」の3類型に分けて分析しました。「非希望型」から「非求職型」へ、「非求職型」から「求職型」へ移行するために「何」が求職行動へ移ることを阻害しているのかということを調査したいという目的がありました。
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