若年層の就職難は自己責任でなく構造問題、セーフティネットの充実を
千葉県に住むAさん(26、女性)は、いま歯科助手として勤務している。「仕事はハードだけど、毎日が充実している」。
短大を卒業後、介護施設、ライブハウス、ケーキショップ店長などを渡り歩いた。「自分でやりたいことがわからなくなっていた」。2008年9月から、船橋市にある「ジョブカフェちば」を利用。最後は2週間、毎日必ず1社以上の企業訪問が義務づけられる「必勝倶楽部」に参加し、歯科助手の内定にこぎ着けた。
カウンセラーとの対話や「自分史」を書くことで、やりたいことが少しずつ見えてきた。「ジョブカフェは雰囲気がいいし、何より一緒に頑張る友達ができたことが大きかった」。一生、今の職場で働くつもりだ。
若者の能力向上と就業促進を図るためのワンストップサービスセンター、ジョブカフェ。03年小泉内閣で打ち出された「若者自立・挑戦プラン」の目玉の一つとして導入された。07年度(08年1月までの累計)は全国で延べ159・1万人が利用し、8・8万人が就業、うち期間の定めのない就業者が6・9万人に及んだ。
政府はほかにも03年以降、若者政策メニューを広げてきた(下表参照)。だが、日本の若者政策には重要な視点が抜けている。
最大の問題は、すべての政策が若者の「自立」を促すことに主眼が置かれていることだ。「自立」という言葉には、若者サイドに問題があるというニュアンスが含まれる。だが、若者だけでは解決できない“構造”に手が打たれていない。
「想像以上のスピードで若者の中に下層が形成されている」。若年者の個人加盟が多い首都圏青年ユニオンの河添誠書記長はそう語る。背景は1999年から始まった労働者派遣法の規制緩和。派遣社員など低収入の非正規労働者が若者中心に急増。07年の20~24歳の非正規社員比率は43%に達する。
多くの若者は、日々の生活を送ることで精いっぱいになっている。食事や住まいを確保するため、日雇いでも働くしかない。そこには一度非正規労働を始めると、なかなか抜け出せない、日本の若者の現実がある。ジョブカフェなどの行政サービスがあっても、日々の暮らしが成立しなければ、受けることはできない。
いま日本の若者政策に求められるのは、セーフティネットを含めた総合的な政策の見直しにある。