私たちは、いったん手にしたものには価値を感じ、手放すのが惜しくなる傾向がある。それを「保有効果」と呼ぶが、その対象はモノそのものだったり、権利だったりもする。
もし「誕生月にクレジットカードで買い物するとポイントを2倍にしますよ」というDMが届くと、多くの人は年に1度しか行使できない「2倍にしてもらえる権利」を手放したくないと感じるものだ。
現「楽天モバイル」のユーザー、無料サポータープログラムの参加者も、プランを切り替えれば1年間無料になりますと聞けば、つい気持ちが動くだろう。新規の契約者も同様だ。すでにオンラインでは3月3日より、店舗では3月4日より先行申し込み受付がスタートしている。今申し込めば、タダでスマホが使えるかもしれないと聞けば、かなりの人がワクワクするだろう。
「オトクな情報」を手にしてしまうと、それを無視するのは難しい。キャッシュレスの高還元率キャンペーンを知るたびに買い物に走ってしまうのは、まさにそういう心理だ。
さらには、1年後にも「保有効果」が待っている。1年使い続けると、なんとなく使っているサービスを手放したくないと感じる。楽天キャリアの快適さが期待どおりだったという前提ならばだが、とにかく最初に「持たせる」ことが勝敗を分ける。いや、そこに尽きると言ってもいい。通信キャリアに限らず、新しいサービスはまず利用してもらわなければ始まらないからだ。
それには「無料」がいちばん効く。だから、「初回は無料」「初月は無料」という課金サービスが花盛りなのである(※楽天のキャリアプランは無料だが、別途端末代はかかる)。
やっぱりドコモが強い理由とは
第4のキャリアとして、楽天がどれほど先行3社の牙城を崩せるかが注目されているが、数字上でみると立ち向かう壁は高い。
2019年12月現在の契約数を見ると、NTTドコモが約8000万人、auが約5800万人、ソフトバンクグループが約4200万人と(数字は電気通信事業者協会発表のもの)、楽天が無料を武器に300万人集めたところで桁が違う。
数字上で見れば、やはりドコモの強さが目立つ。2019年12月に総務省が発表したグループ別シェアを見ると、ドコモが37.6%(MVNOを含めると43.2%)、KDDIグループが27.7%(MVNOを含めると31.4%)、ソフトバンクグループが22.1%(MVNOを含めると25.4%)、MVNOが12.5%となっている。3社のシェアはかなり縮まってはいるが、やはりドコモが4割近くをキープしているのが現状だ。
その理由は、ドコモのケータイサービスが他社より抜きん出て優れているからではない。現状を変えたくない=現状維持バイアスが作用しているからと言っていいだろう。最初に持ったケータイがドコモだったガラケー世代が、そのままずっとキャリアを変えずに使い続けているのが寄与しているといっても過言でない。ドコモショップが現在シニア向けスマホ教室に力を入れているのも、その世代のユーザー数が多いことの表れだろう。
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