「不倫した芸能人」がCM業界から追放される理由 なぜ今も矢口真里にCMを頼みづらいのか?

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ベッキーの不倫が発覚し、契約を打ち切られたときは「奴隷契約」などと広告主側を批判する声もあったが、「いえいえ、われわれはあなたのプライバシーも含めて高額の金を払っているんですよ。あなた、ただの契約違反でしょ? 不倫をしたかったら契約期間が切れたらいくらでもおやりくださいませ」というのが広告主の言い分なのである。

何しろ企業のマーケティングプランが完全に破綻するし、視聴者からのクレームを一身に受けることとなる。

「おしどり夫婦」と一時は言われたものの、実際は週刊誌などから「離婚間近」などと報じられる芸能人夫婦がいる。彼らがなかなか離婚をせず、突発的に離婚を発表し「やっぱりね」となるそのタイミングは夫婦共演CMの契約期間が終わったときであることが多い。

一度、スキャンダルが発覚した芸能人がCM復帰するまでにはかなり時間がかかる。長期間の自粛を経てテレビ番組や映画などに出演した後に、ようやく出演に至るケースが多い。要するに過去にたどったCM出演までのルートをまた1からやり直さなければいけないということだ。

矢口真里が不倫から3年後の2016年に日清食品のCMに出たが、設定はOBAKA's UNIVERSITYの危機管理の権威として「二兎を追う者は一兎をも得ず」と学生に教訓を教えるもの。これが猛烈なクレームを受け、矢口は結局降板。今でも地上波TVのCMには出られていない。

東出不倫でとばっちりを受けた杏

タレントの商品価値はそのイメージないし、好感度にある。それが崩れたら企業や商品にも悪影響を及ぼすため、とにかく広告代理店や広告主としては契約タレントに不祥事を起こしてほしくないのが本音である。

あと、今回の東出の件でとばっちりを受けたのが妻の杏だ。彼女は何も悪くないにもかかわらず、視聴者から「不倫された杏ちゃんが可愛そうで商品のことがまったく頭に入らない」といった声も聞こえた。

何やら陰を背負わされる結果となった杏だが、広告業界では彼女の「おしゃれ」「良妻賢母」的イメージがどう変わったか今後分析がなされることだろう。それで新境地のCM獲得に繋がればいいのだが、つくづく東出は見事に「やらかし」てしまったといえよう。

まぁ、個人的にはCMに著名キャラを使うのはアスリートが靴のCMに出る程度でいいのでは、とも正直思う。タレントのファンが商品を買ってくれるかもしれないが、どうせ契約が切れたらその人たちの心は商品から離れていくのだから。

中川 淳一郎 著述家、コメンテーター

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なかがわ じゅんいちろう / Junichiro Nakagawa

1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライターや『テレビブロス』編集者などを経て、出版社系ネットニュースサイトの先鞭となった『NEWSポストセブン』の立ち上げから編集者として関わり、並行してPRプランナーとしても活動。2020年8月31日に「セミリタイア」を宣言し、ネットニュース編集およびPRプランニングの第一線から退く。同年11月1日、佐賀県唐津市へ移住。ABEMAのニュースチャンネル『ABEMA Prime』にコメンテーターとして出演中。週刊新潮「この連載はミスリードです」他連載多数。

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