「在宅リモートワーク」で多くの人が陥る苦悩 「テレワーククライシス」をどう乗り越えるか

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対面しているときよりも声を出して相槌を打たないと「聞こえてますか?」と言われてしまうこともしばしば。いつもよりオーバーアクションが必要となってきて、うなずきや相づちをしっかり声に出さなければならず、エネルギーを消耗します。

また、画面に映る自分の姿を気にしすぎて頻繁に髪の毛を触ってしまい、相手に不快感を与えてしまう可能性も注意しなければなりません。服装や身だしなみにも気遣いが必要となり、在宅といえどもきちんと身支度をしなければならないと憂鬱になる方も多いようです。

反面、画面を通じての打ち合わせなどは特になく、それによるストレスを感じることはないけれど、反対に顔を合わせる機会がなく孤独にさいなまれてしまうケースもあります。メールで資料を共有して、チャットなどのやり取りで済ませることができる業務の方がそれにあたります。

自分のペースで仕事に取り掛かれる反面、長く続くと、取り残された不安や誰とも話さないことによる孤立感から、気持ちのコントロールが難しくなります。

部屋着のままで1日過ごすこともでき、自分自身の生活リズムの切り替えができずに困っている声も聞かれます。気持ちの切り替えと場所は、案外強い結びつきがあります。リフレッシュするのに非日常の空間や場所が有効であるように、場所を変えることで気分を変えることが比較的容易になります。

しかし、外出することを控えるこの状況では、気分を変えるためにカフェで仕事をするということも難しいでしょう。図書館も閉館になっている現状です。感染防止のために在宅ワークをしているのに、人の集まるところにわざわざ行くのは本末転倒です。しかし、1日のリズムが作りにくくなり、自由なはずが息苦しい毎日になってしまっています。

仕事の分量があからさまに

オフィスに出勤し、座っていれば仕事をしていると認識されていた人も、成果物がすべてとなると仕事の質や量があからさまになります。単純な集計作業などは量が目安になるかと思いますが、資料作りなどは、準備や下調べに時間がかかることがあります。

資料の出来栄えがよければ理解してもらえるかもしれませんが、なかなか形にならないようなものの場合、自分の仕事量を可視化することができずに、組織からの評価が下がってしまうことも考えられます。すると今後の自分の立ち位置が危うくなる連鎖も起きてきます。

リモートワークをとりあえず始めてしまった組織も多いかと思いますが、今こそ、管理者のマネジメントが問われます。それには、毎日決まった時間にすべての人との直接のやり取りを行うことが大切です。組織の大きさや業務内容にもよりますが、可能であれば、就業開始時、昼食の後、終業時間の終わり1時間前くらいの3回は必要でしょう。

この場合、一方的な指示にならずに、従業員の声をしっかりと把握することが何よりも大切です。相互の意思疎通ということを重視しましょう。

定時報告をすることによって、時間管理をはじめ、業務目的の共有、仕事の内容、進捗の管理、やるべきことの優先度をお互いに確認できます。チームの場合は、ネットなどを介して顔合わせの時間を持ち、進捗状況とやるべきことを共有することが大切です。実際にオフィスにいるときのような日常会話やちょっとした確認事項ができないと、業務自体に影響が及ぶほか、働く人のメンタル状況も悪くなります。

決して丸投げすることなく、お互いに細かにチェックを入れながら、業務を滞りなく進め、孤立感にさいなまれることなく、この時期を乗り切ることができればと思います。

そもそも、医療、福祉を含め、多くの業種では、テレワークさえも不可能な現場も多くあります。

1日も早く、この状況が収束することを願います。

大野 萌子 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

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おおの もえこ / Moeko Ohno

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。

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