ブラックマンデー型の大暴落の可能性がある 「Xデー」が来たら、その後はどうなるのか?

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そして、何よりアメリカでマイナス金利を導入すれば、銀行株が低迷するだけでなく、超大国で金利を維持できるのは、恐らく中国だけになる。2008年のリーマンショックでは、原因がアメリカにあったにもかかわらず、結局米ドルは買われた。

だが、今回の新型コロナショックではドルが売られ始めている。だから金が買われているのだが、アメリカが最も警戒すべきは、その先の、「基軸通貨としての特権の維持」だ。国力で米中が逆転するのはまだ先のことだが、ジャブジャブの流動性は残酷に先回りする。アメリカが金利を維持できるかは重要な試金石だろう。

「長期金利上昇と株の一時的反発」の先に「待つもの」

だからこそ、アメリカは大規模な財政政策を発動するしかない。それはトランプ氏の再選を助ける、中間層向けの大幅減税かもしれない。

いずれにしても、それで長期金利は反発する。長短金利のスプレッドが復活すれば、銀行株を中心に、株は一時的に戻る。だがその先に待っているリスクは、金利が上がることによる、債券市場のバブル崩壊の可能性である。実はそれが「新型コロナショックの本番」の可能性がある。そうなると、今度は別のシナリオが浮かぶ。

第1次世界大戦による欧州の荒廃と、致死率が上がってアメリカ国内に戻ってきたスペイン風邪は、アメリカには約40%の卸売り原材料取引の落ち込みをもたらした。また、賠償金を背負った敗戦国のドイツは、デフレの後、大規模な財政・金融政策でハイパーインフレになった。そしてそれをきっかけに、世界は第2次世界大戦という、人類史上最大の不幸へ突っ込んでいった。

今は当時のような帝国主義の時代ではない。だがそもそも1648年のウエストファリア条約(30年戦争の後に結ばれた国際条約)締結の後、欧州各国で中央銀行が生まれたのは、戦争での財政ファイナンスが誘因となっている。

つまり、もとを正せば中央銀行はナショナリズムの象徴のような存在である。だからこそ、アメリカの単独覇権が完成した1990年代以降は、グローバリズムの体制下で中央銀行は連携してきた。

だが恐らく新型コロナがもたらす混乱は、リーマンショック時のような信用不安よりも先に、現金が不足する事態への対応力だろう。恐らく、そこで普遍的なUBI(最低所得保障)が始まるかもしれない。ならば、どれだけサンダース氏を否定しても、いったんはサンダース氏の時代が始まるということではないのか。次回以降、もし機会があれば、過去の中央銀行の財政ファイナンスと、その結果のバブル崩壊の検証をしたい。

滝澤 伯文 CME・CBOTストラテジスト

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たきざわ おさふみ / Osahumi Takizawa

アメリカ・シカゴ在住。1988年日興證券入社後、1993年日興インターナショナルシカゴ、1997年日興インターナショナルNY本社勤務。その後、1999年米国CITIグループNY本社へ転籍。傘下のソロモンスミスバーニーシカゴに転勤。CBOTの会員に復帰。2002年CITI退社後、オコーナー社、FORTIS(現在のABNアムロ)、HFT最大手Knight証券を経て現在はWEDBUSH傘下で、米国の金融市場、ならびに米国の政治動向を日系大手金融機関と大手ヘッジファンドに提供。市場商品での専門は、米国債先物・オプション 米株先物 VIXなど、シカゴの先物市場商品全般。

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