ブラックマンデー型の大暴落の可能性がある 「Xデー」が来たら、その後はどうなるのか?

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ではそのような市場でFEDは何ができるのか。前回の記事で「FEDの持つ金利政策の弾丸は残り少ない」とした。50BPの緊急利下げの後、次のFOMC(米公開市場委員会、17~18日)で市場の予想通り追加の50BPの利下げを断行すれば、残された金利は0.5%だ。

1987年のブラックマンデーには「前兆」があった

そこからは、FEDはバズーカではなくナイフで戦うしかない。ここで言っておきたいのは、1987年のブラックマンデーは、突然起こったわけではないことだ。当時は主役ではなかったナスダック市場は、その1カ月前から下落が始まり、ピークで450をつけた指数は直前に400まで10%を超える下落をしていた。

そしてブラックマンデー当日は、400から320まで一気に20%の大幅下落となったが、個人的には、今回の新型コロナでも、どこかでサーキットブレーカーが発動されるブラックマンデー型の大暴落が起こることを予想している。ただその後いったんは急速に戻るだろう。そのV字のボトムは、FEDの弾が出尽くした絶望感と、その次に起こる非常事態のアクションへの期待感の間になるはずである。

そしてその非常事態のアクションは、FEDがこれまでの枠を超え、日銀のように直接株式(ETF)を買うようにする方法か、政権と歩調を合わせ、財政出動を支えることだろう。

前者はFEDの定款の変更が必要になるはずだが、ベン・バーナンキ氏やジャネット・イエレン氏という歴代のFRB議長は、マイナス金利も考慮した上で、この手法に前向きな発言をしている。

だが個人的には、肝心のジェロームパウエルFRB議長は、マイナス金利や株式購入には消極的で、それよりも財務省の財政拡大をサポートする手法を優先すると考えている。理由は、パウエル氏はアングロサクソンの主導した米英型資本主義に最後までこだわるという単純な思惑である。
 そもそも日欧のマイナス金利は、アメリカがいわば「アンカー」(錨)となって金利を維持していることで秩序を保っている。

旧英国連邦であるアングロスフィアの英語圏の中央銀行がマイナス金利を導入していないのは恐らく偶然ではないが、FEDを辞め、アカデミズムの世界に戻ったバーナンキ氏やイエレン氏と比べ、現役のパウエル氏はアメリカを頂点とする秩序への責任がある。もし中央銀行が民間の株を買うようなれば、どうやって社会主義を否定するのか。どうやってサンダース氏のMMTの否定をできるのか。全く整合性がなくなる。

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