各国中銀の政策協調もドル安円高は止められず 順当にバトンをつないだが効果は限られる
新型コロナウィルスの感染拡大が市場心理を揺さぶる状況が続いている。こうした中、FRB(米連邦準備制度理事会)、日本銀行、ECB(欧州中央銀行)、BOE(イングランド銀行)が当面の下押し圧力に対し行動を起こす意思を次々と表明し、その仕上げとして主要7か国(G7)財務相・中央銀行総裁が電話会談を行い、経済的な影響への対応策を協議する動きに至った。
主要国の政策当局が順当にバトンをつなぎ合う様子は市場心理を改善させ、3月2日のNYダウ平均株価は前日比プラス1293.96ドルと1日としては史上最大の上げ幅を更新した。しかし、こうした地合いでもアメリカ10年金利の1.20%割れが定着する中でドル相場の下落は止まらず、ドル円は108円付近、ユーロドルは1.11付近で推移している。
これらの政府・中銀による言動は正しいものだが、後述するように、金融緩和や財政出動で感染拡大が止まるわけでもなく、対症療法であり気休めとしてのアクションであることは誰もが分かっている。一連の勇ましい協調的な意思表示も感染拡大をめぐるネガティブな報道一発で吹き飛ぶおそれがあることは念頭に置かねばならない。
利下げか、流動性供給か
各国中銀から示された声明は似て非なるものであった。例えば黒田日銀総裁による「総裁談話」は以下のようなシンプルなものであった:
「最近の内外金融資本市場では、新型コロナウィルス感染症の拡大により経済の先行きに対する不透明感が強まるもとで、不安定な動きが続いている。日本銀行としては、今後の動向を注視しつつ、適切な金融市場調節や資産買入れの実施を通じて、潤沢な資金供給と金融市場の安定確保に努めていく方針である。」
ここで実施の意図が示されているのは「適切な金融市場調節や資産買い入れの実施」であり、利下げではない。よって次回会合(3月19日)での緩和予告と解釈すべきではないだろうが、金融市場(とりわけ株式市場)にそのような理屈は通じないだろう。意図せずとも「何かしなくてはならない」という地合いができてしまったと考えたい。
こうした異例の談話発表は日銀の政策反応関数において最も重要な為替市場(≒ドル円相場)が不安定化する中、「3月19日まで座して待つのは非現実的」との判断はもともとあったかもしれないが、やはり日米欧三極で歩調を合わせることが意識されたのだろう。2月下旬から続く円高の勢いを放置すれば105円台に切り込んでくる展開も十分考えられた。そうなってしまえば元の水準に戻すのは相当難渋する。時宜を捉えた一手だったとは評価できる。
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