意外と知らない「ウイルスと人体」のメカニズム コロナウイルスが広がる今押さえておきたい

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皮膚の体温調整機能(図:小林哲也)

ところが、寒くなると体の熱が大幅に失われて体温が下がり、代謝も下がってしまう。そのため交感神経が働き、皮膚の表面を走る動脈を収縮させて血流を減らし、放熱を抑えているのだ。これは、動物の中で人間だけが発達しているしくみだという。というのも、人間には動物のような全身を覆う毛がないからだ。

動物は寒さに直面すると、放熱を抑えるために通常は寝かせている毛を立てる。毛を立てると皮膚に接する空気の量が増え、毛の中の空気は循環しないため皮膚で温められて、温かい層が断熱効果を生んでいる。

鳥肌が立つしくみ(図:小林哲也)

私たちは“すごいしくみ”と共に生きている

では、このしくみは人間に残っていないのか。

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実は、鳥肌がその反応の名残なのだ。他の動物のような全身を覆う毛がなくなっても、人間には「立毛筋」という毛を立てる筋肉が残っている。

寒さを感じると、この筋肉が収縮して毛穴をきゅっと締め上げ、いぼいぼの皮膚(鳥肌)になるのだ。ただし、肝心の毛がないため、放熱防止という意味ではそれほど効果はない。

ちなみに、寒いとゾクゾクするのも立毛筋が収縮するから。夏の怪談にゾクゾクして鳥肌が立つのも、同様の理由なのだ。

以上、今の寒い季節、私たちの体につきものである「風邪」や「ウイルス」、さらに「鳥肌」など、メカニズムの視点から連想される人体のしくみについて解説したが、ほぼ毎日といえるほど自分の身に生じていることなのに「そもそもよく知らない」ことは意外なほどたくさんある。私たちは今、“すごいしくみ”と共に生きているのだ。

涌井 良幸 サイエンスライター

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わくい よしゆき / Yoshiyuki Wakui

1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。教職退職後は著作活動に専念している。

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涌井 貞美 サイエンスライター

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わくい さだみ / Sadami Wakui

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程修了後、富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校教員を経て、サイエンスライターとして独立。書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。

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