タピオカや恵方巻を捨てまくる社会のゆがみ 「目先の利益」だけを追う店も後を絶たない

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一方で質のよさと適正な販売数量を守る老舗店も存在する。その1つが、東京・日本橋に本店を構える和菓子店の榮太樓(えいたろう)總本鋪だ。同社は文政元年(1818年)創業で、200年以上の歴史がある。

榮太樓總本鋪は原材料に徹底してこだわり、餅米などを完全無農薬・無化学肥料で生産する農家から調達している。

同社の副社長・細田将己氏は「本来の餅は、餅米を蒸してペッタンペッタンついて作るものだ。だがスーパーなどで販売されている餅のほとんどは簡易的に餅粉を使った歯応えのないもの。賞味期限を優先するために、大量に砂糖が入れられ、デンプンの硬化防止剤が使用されていることが多い。そのため私たちの考える自然な餅菓子の賞味期限よりはるかに日持ちはするが、おいしさは反比例してしまう」と話す。

原材料にこだわりを持つ榮太樓總本鋪だが、年ごとの気候条件等により農家からの原材料調達が足りず、欠品の恐れも出てくる。「難しい問題だし、リスクを取りながらやっていくしかない。販売店には「発注量がこの数を超えたら、販売できません」とお願いしておく。そうすると、おのずと販売するチェーンも限られてくる」(榮太樓總本鋪・細田将己副社長)。

榮太樓總本鋪は、稼ぐ金額だけを追求してきたのではない。和菓子の品質にこだわり、真摯に考えてきたからこそ、200年という長い年月、生き残ってこられたのだろう。

企業は売り上げだけを追ってはいけない

前述の恵方巻やタピオカ店のように、「稼ぐ金額」を誇る個人や組織を見ると、「本当はそこだけじゃないのに」と歯がゆくなる。仕事の結果としてお金がついてくるのに、お金が先になってしまい、それしか見えなくなっている。「裸の王様」のごとく、気づくことができていない。

本来、仕事とは、(1)社会に貢献(2)自分(自社)の実績と信頼性を築く(3)対価としてお金を得るものであるはずだ。(1)と(2)をすっ飛ばして(3)だけ得られるというものではないだろう。

ただでさえSDGs(国連の「持続可能な開発目標」)の周回遅れと評されている日本、これ以上、稚拙さを世界にさらさないことを祈っている。

井出 留美 食品ロス問題ジャーナリスト/消費生活アドバイザー

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いで るみ / Rumi Ide

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン(株)青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で食料廃棄に憤りを覚え、誕生日を冠した(株)office3.11設立。日本初のフードバンクの広報を委託され、PRアワードグランプリソーシャルコミュニケーション部門最優秀賞へと導いた。『食品ロスをなくしたら1か月5,000円の得』『賞味期限のウソ』。食品ロス問題を全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして2018年、第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門受賞。Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞

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