問題は、この状況次第で日本国内に感染爆発が起こるかどうかだが、日本が数千人単位の感染者を出した場合には、世界各国が日本への渡航を控えるようになり、最悪7月の東京オリンピックの開催に間に合うぎりぎりの期限とも言われる5月までに、現在の感染拡大が収まるかどうかが問われることになる。
イギリス・ロンドン市は東京開催が中止になった場合、「代替地」として立候補すると表明しており、その可能性はゼロではない状況だ。
仮に東京五輪が中止となれば、どの程度の経済的損失が発生するか。
東京五輪の経済効果は、東京都の発表で「32兆円」という途方もない数字が発表されているが、この数字には交通インフラの整備やバリアフリー促進といった間接的な経済活動も入っている。いわゆる「レガシー(遺産)」効果だ。
施設整備費や大会運営費、放映料と言った「直接的効果」は約5兆2000億円で、レガシー効果はその5倍の約27兆1000億円。とりあえず、直接的効果だけを考えれば、約5兆円の損失。日本のGDPが約500兆円とすれば、その100分の1を失うことになるわけだ。
1990年代のバブル期を上回る「五輪バブル」
実際に、帝国データバンクが昨年の11月に行った調査によると、東京五輪開催が日本の持続的な経済成長のために「有効だと思う」と回答した企業は半数に満たない46.8%にとどまっている。国内企業の半数しか東京五輪の需要を当てにしていないということだ。
業界別で見た場合、プラスと答えている企業は、サービス(17.5%)、金融(16.8%)、運輸・倉庫(15.8%)、製造(15.5%)となっている。経済効果は、東京都で約20兆円、大会開催に伴う雇用誘発効果は東京都で130万人、全国で194万人と試算されている。壊滅的な経済危機に陥る、といった見方をする人もいるが、思ったほど大きくないかもしれない。
ただ問題なのは、東京五輪開催というアナウンス効果によって、過剰な投資を生み、「五輪バブル」に陥っていることだ。不動産経済研究所が発表した2020年1月の首都圏マンションの1戸当たりの平均価格は8360万円。1月だけ突出した価格ではあるものの、この価格はバブル期の1990年11月(7497万円)を上回り過去最高になった。
2019年の首都圏マンションの平均販売価格は5980万円となり、過去7年、平均で1500万円の上昇となっている。まさに東京五輪を起爆剤とした「不動産バブル」が再燃しようとしていると言っていい。
放映権などの影響で東京五輪を10月とか11月に延期するとか、あるいは1年遅らせるといった延期の可能性は低い。そう考えると、やはり4月までには現在の感染拡大が収まることを祈るしかないだろう。
【シナリオ②】
消費は半減? 東日本大震災級の景気落ち込み!
能天気な「緩やかな景気回復」の化けの皮が剥がれる?
東京商工リサーチがこの2月20日に発表した『新型コロナウイルスに関するアンケート調査』によると、「現時点ですでに影響が出ている」と答えた企業が2806社(22.72%)、「現時点で影響は出ていないが、今後影響が出る可能性がある」は5401社(43.74%)、「影響はない」と答えた企業は、4141社(33.54%)となっている。
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