戦争をしたがっているのは戦争の怖さを知らない人たち
湯浅:最近、日本がおとなしくしていると、中国にどんどん付け込まれて、やられてしまうのではないか、やられる前にもうちょっと頑張らなきゃいけない、やられないように集団的自衛権の行使を容認する、という理屈が見受けられます。それについてはどう思われますか。
瀬戸内:ちょっと言いにくいのですが、私の時代は日本人が中国人と韓国人をいじめているんですよ。日本にいる中国人と韓国人は自分の国では食べていけない人も多かった。日本人は彼らを侮蔑し、仕事なんて与えなかった。仕事といったらクズ拾いとか、道路に座って手品を見せるぐらいしかない。それでも彼らは中国や韓国にいるよりは生きられたのも事実なの。私たちは、彼らの国の本当に貧しい人たちしか見ていなかったのですよ。
ところが、中国や韓国で本当に教養のある人やおカネのある家は、日本人なんかかなわないくらいのレベルなのです。そういうことを私たちは知らないし、学校でも教えてくれなかった。だから、私は戦争に負けた後で、人の言うことを鵜呑みにしたらダメだ、自分が経験して、手で触って、温かさも滑らかさも自分で感じたものしか信じないと誓いました。それが自分にとって、戦後の最も大きな革命でした。
湯浅:当時、中国人や韓国人をいじめていた日本人が、そのポジションに今度は自分たちがなるのが、怖いのではないですかね。「中国や韓国に負けるな」と叫んでいる人たちは、自分たちが仕返しされるのを恐れている。
瀬戸内:でも、戦前・戦中に彼らをいじめた経験のある人や、それを見ていた人たちは、もうほとんど死んでいるじゃないですか。今、そんなことを言っている人たちは、戦後の世代でしょう。
湯浅:そうですね。もっと若い人たちです。
瀬戸内:今、戦争をしたがっているのは、何も知らない人たちですよ。知らないから平気で憲法改正や特定秘密保護法とか、戦争をしたがっているようなことを言うのだと思いますね。
湯浅:安倍晋三さんを含めて若いですよね。
瀬戸内:戦争を経験した人が、まもなくみんな死にます。戦争の怖さを知らない人たちが、戦争のできる国にしようとしていて、本当に戦争するかもしれない。いざとなったらアメリカが助けてくれるなんて思っていたら、とんでもないですよ。中国と戦争してアメリカが加わったら、日本の半分はアメリカの何々州になって、残る半分は中国の何々省になります。日本はないです。そういうことがありうることを、今の若い人は考えてもいないですね。
湯浅:日米で中国を封じ込める、といった意見もありますが。
瀬戸内:アメリカは自分の国が危なくなったら、日本なんかどうでもいいですよ。
湯浅:私もそう思います。
瀬戸内:中国と仲良くなるか、あるいは中国と本気で戦うか。日本のために戦うなんてない。
湯浅:むしろアメリカが考えているのは、北朝鮮という非常に不安定要素がある中で、日本と中国と韓国がもうちょっと協調してくれよ、と。何かあったときにこんなに足並みが乱れているのでは、また自分たちが出ていかないといけなくなるじゃないか、といったことですよね。
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