さて、変動金利型のリスクとして、とくに筆者が気になっているのは「金利上昇によって利息ばかり支払うことになるリスク」です。
金利が高くなると、その分だけ、ケース2のように利息負担がどんどん多くなっていきます。その増えた利息負担分だけ、元金返済が鈍っていきます。金利上昇時は、第1の特徴(5年ルール)が裏目に出るわけですね。
10年返済後の住宅ローン残高は、ケース1では2914万円ですが、ケース2では3259万円。ケース2では5年後の毎月返済額がアップしている分だけケース1よりも約153万円多く支払ったにもかかわらず、元金の減りは345万円も少ない計算に。
この例で毎月返済額だけを見ていると、返済6年目は10.2万円から最大で12.8万円に増えるだけなので、利息ばかり払っているという事実に気がつかない……というのが、変動金利型の仕組みをよく知らないまま借りてしまったご家庭に多く見られます。変動金利型を使うなら、半年ごとに償還予定表の内訳を必ず確認することが重要です。
125%ルールが追い打ちをかける
加えて、ケース2のような金利上昇時は、第2の特徴(125%ルール)が追い打ちをかけます。10年返済後の住宅ローン残高3259万円を残り25年間で完済するには、本来は16.1万円の毎月返済額である必要がありますが(金利3.4%の場合)、125%ルールに基づけば前述のとおり15.9万円(=10.2万円×125%×125%)が毎月返済額の上限になるのでしたね。この差額の約0.2万円分はオマケしてもらえるわけもなく、15.9万円のうち元金返済に充てられる額が当初の予定よりも約0.2万円分だけ減らされる形で調整されます。
さらに、同じ毎月返済額を支払っていても、適用金利の上昇で利息負担が増え、下手をすると毎月返済額のすべてが利息で占められることになり、それも追いつかなくて「未払利息(みばらいりそく)」が発生する可能性がある、というのが変動金利型の第3の特徴です。
未払利息は積み上がり、数十万円というようにまとまった額になりえますが、次の5年に入る前にその積み上がった分を払わないと、次の5年間の毎月返済額の全額が利息になることも。ケース2のように元金返済の占める割合が減っていき、十数万円もの毎月返済額が、利息に充てられるだけで元金が1円も減らない……そんな事態に陥る可能性があるのです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら