「賃貸住宅市場が危ない」、日銀が異例の警鐘 金融緩和による住宅過剰、物価を下押し?
「非常に珍しいことではないか」
賃貸住宅市場に詳しい農林中金総合研究所の古江晋也・主任研究員はそう話す。
古江氏が珍しいと驚くのは、日本銀行が今年1月に公表した「地域経済報告」の記述だ。この中で日銀は「多くの地主等が短期間のうちに貸家経営に乗り出した結果、貸家市場全体でみると、需給が緩みつつあるとの声が聞かれている」「実際、賃貸物件の仲介業者等からは、郊外の築古物件など相対的に魅力の乏しい物件を中心に、空室率の上昇や家賃の下落が見られるとの声が聞かれている」などと、賃貸住宅市場の現状に警鐘を鳴らしている。
バブル期を超える不動産業への新規融資
確かに、賃貸住宅市場は供給過剰の懸念が高まっている。特に、2015年1月に施行された改正相続税法により、相続税の節税対策として多くの貸家が建設されてきた。超低金利政策が長期化し、マイナス金利政策の導入でもう一段、金利が低下したこともこれを後押ししている。「不動産業への新規貸し出しは2009年以降、国内銀行、信用金庫ともに拡大を続け、銀行の新規融資は2015年は10.7兆円、2016年は12.3兆円と2年連続で(バブル期の)1989年の10.4兆円を超えた」(古江氏)。日銀の懸念はもっともであると言える。
ただ、サブリース方式で賃貸住宅を供給する大手各社の決算を見るかぎり、今のところ市場に変調は出ていない。
たとえば、業界最大手である大東建託は2017年3月期の決算発表で、アパート入居率への懸念に対し、「当社グループが管理している賃貸建物の入居率にまったく懸念はありません」と答えている。同社の居住用賃貸建物の入居率は96.9%で、健全水準とされる96%を上回っているという。今後も入居者ニーズに応じたハード・ソフト両面のサービスを提供することにより、入居率が急激に悪化することはない、と説明している。
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