「賃貸住宅市場が危ない」、日銀が異例の警鐘 金融緩和による住宅過剰、物価を下押し?

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日本銀行のマイナス金利政策も賃貸住宅建設を後押し(撮影:梅谷秀司)

2030年代は本格的な空き家時代に

今後、賃貸住宅市場はどのように推移していくのか。野村総合研究所はこのほど、2030年度までの住宅市場の長期予測を公表した。

それによると、2016年度に97万戸あった住宅供給戸数は30年度には4割減の55万戸まで減少。とくに貸家の供給は43万戸から25万戸まで減少すると予測している。同時に、2033年の空き家数は約2166万戸、空き家率は3割超と、本格的な空き家時代が到来すると見込まれている。

予測を担当した同社グローバルインフラコンサルティング部の榊原渉部長は「景気に左右される分譲住宅、ライフステージに応じて建て替えなどが決定される持ち家と比べ、いちばん予測しづらいのが貸家の需要。今後は単身世帯が増えて持ち家率が下がり、持ち家にこだわらない層の賃貸アパート、賃貸マンション需要が増えていくことも考えうる」と指摘する。

住宅投資は名目GDP(国内総生産)の3%程度を占めるにすぎないが、裾野が広いだけに、その減速の影響は大きい。また、賃貸住宅の過剰供給は、消費者物価指数の構成比の2割弱を占める家賃の下押し圧力となり、デフレの一因となっている。皮肉なことに、極端な金融緩和が金融機関の不動産融資を後押しし、供給過剰から2%の物価目標が遠のくという形で日銀に跳ね返るというブーメラン現象が生じている。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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